2012 Fiscal Year Annual Research Report
モンテカルロシミュレーションによるナノ構造内のフォノン輸送解析
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12J09161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 琢磨 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フォノン熱伝導 / 熱電変換材料 / ナノ構造 / 合金 / モンテカルロ法 |
Research Abstract |
熱電変換素子は熱を電気エネルギーに変換する素子である.その変換効率は材料の熱伝導率が低くなるほど向上することが理論的に知られている.このことからこれまで熱伝導率低減のために実験では合金化やナノ構造化などの手法が数多く提案され,成功している.その一方でこれらの手法による定量的な熱伝導率の低減の値やその理論的な裏付け等において不明な点が多い.熱電材料作成条件の最適化や変換の性能予測のためにはこれらの知見が必要であることから,本年度では合金系およびナノ構造系のそれぞれにおける熱伝導現象の数値解析を行った. 合金系ではシリコンゲルマニウムを対象に分子動力学法を用いてフォノン輸送特性を解析した.具体的には,フォノン熱伝導において重要な物性値である緩和時間を,従来は純結晶系にのみ適応されてきた手法を合金系に拡張することで直接的に計算した.なお,これまで報告された研究では合金系における緩和時間は近似的のみに取り入れられている.その結果,合金効果による緩和時間の低減効果が確認できたが,その一方でそれのみでは実験で観測される熱伝導率の低減値を説明できないことがわかった. ナノ構造系ではフォノンの界面散乱による熱伝導率の低減を定量的に予測するために,モンテカルロ法を用いたボルツマン輸送方程式の確率論的解法のシミュレーションを行った.なお,パラメータとして必要なフォノン輸送特性は第一原理計算によって得た.本年度ではまずモンテカルロシミュレーションのプログラムを構築した.そのプログラムによって界面を有さないバルクの熱伝導率,および仮想的な界面を有する一次元的なナノ構造における熱伝導率のサイズ依存性を計算した.それらの計算結果を理論的な解と比較し,一致したことから手法の妥当性が確認できた-また同様の手法を用いて,より応用的な熱電材料であるPbTe-SrTeナノ結晶におけるフォノン輸送解析の準備を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では合金系のフォノン輸送に関する研究をひと通り終え,既に英語論文にまとめて提出した.また,今後の二年間で主に行うモンテカルロシミュレーションの基礎的なプログラムの構築を終え,簡易な系での計算を行った.これらのことは当初の研究計画に沿っており,首尾よく進んでいる.ただし,それらの結果に対して今後より深い議論が必要であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の通り,モンテカルロ法を用いてナノスケールの空孔を有する熱電材料における熱伝導解析を行う予定である.また,その発展として界面を有するナノ構造における解析も行なう.その場合,フォノンの界面透過関数をどのように得るかが問題となる.この点に関しては,非平行グリーン関数法や分子動力学法等の手法による解決が考えられる.同時に,近年報告されたvariamce reduced Monte Carlo formulationsを用いてプログラムの高速化を試み,大規模な系でのシミュレーションの実現を目指す.
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Research Products
(10 results)