2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J09520
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
栂 浩平 富山大学, 理工学教育部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カースト / 形態形成 / ツールキット遺伝子 / ホルモン |
Research Abstract |
本研究は,社会性昆虫におけるカースト特異的な形態形成の発生機構を明らかにすることを目指し,タカサゴシロアリの兵隊分化過程における(1)動物の形作りに関わるツールキット遺伝子や(2)ホルモンのシグナル伝達因子の役割を明らかにすることを主な目的としている.タカサゴシロアリの兵隊は頭部にツノと外分泌腺(額腺)を発達させると同時に,退縮した大顎を保有する. (1)ツールキット遺伝子の役割 複数のツールキット遺伝子のホモログ配列を単離し,発現量解析や機能解析を行った.発現量解析の結果,Deformedが大顎を含む口器で高発現していた.機能解析の結果,Deformedが大顎の退縮には関与するが,ツノや額腺の形成には関与しないことが明らかとなった.このことはツールキット遺伝子が,改変する器官や部位の決定だけでなく,兵隊特異的な退縮にも関与することを示唆している. (2)ホルモンのシグナル伝達因子の役割 カースト分化には,幼若ホルモン(JH),エクダイソン,インスリンが重要な役割を担う.そこで,各ホルモンの受容体遺伝子および主要なシグナル伝達因子のホモログを単離し,発現量解析や機能解析を行った.発現量解析の結果,各ホルモン関連遺伝子は,兵隊分化過程において部位によって発現パターンが異なっていた.各受容体遺伝子の予備的な機能解析の結果,JH受容体とエクダイソン受容体がツノの形成に関与するが,額腺の形成には関与しないことが示唆された.さらにエクダイソン受容体は大顎の退縮にも関与する可能性が示唆された.これらのことは,部位特異的なホルモン受容が,兵隊特異的な器官の発達や退縮に重要であることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カースト特異的な形態改変をもたらすツールキット遺伝子を特定することができた.また,いくつかのホルモンについて,部位特異的なホルモン受容が,カーストの特異的な器官の発達や退縮において重要な役割を担うことを示唆する結果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
ツールキット遺伝子とホルモンのシグナル伝達因子との関係を明らかにし,各因子の作用機序を明確にする.カースト分化は,環境要因の影響を大きく受けるため,環境要因がツールキット遺伝子やホルモンのシグナル伝達因子に与える影響を明らかにする. シロアリの兵蟻の形態は,種によって多様であり,シロアリの社会と兵隊の形態には関係性があることが知られる.他種の兵蟻分化におけるツールキット遺伝子やホルモンのシグナル伝達因子の発現・機能解析を行うことで,兵蟻の進化発生機構の解明を試みる.
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Research Products
(3 results)