2012 Fiscal Year Annual Research Report
二層分数量子ホール系を通じた新奇な南部・ゴールドストーンスペクトルの代数的解析
Project/Area Number |
12J09536
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱 祐介 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 二層量子ホール系 / Type-II南部・ゴールドストーン粒子 / SU(4)対称性 / スピン・擬スピン / 位相コヒーレンス / 超電流 |
Research Abstract |
対称性の自発的破れに伴い出現する南部・ゴールドストーン(以下NGと記す)粒子には、例えばLorentz共変な系(例えばQCD真空)のように、NG粒子(パイオン)の数二破れた生成子の数という等号が成り立つ状況下で出現する、波数の奇数幕に比例した分散関係を持つType-I NG粒子と、強磁性体やカラー超伝導等のLorentz共変性のない系のように、上の等号が成立しない状況下(破れた生成子の交換関係及びその真空期待値の有無と関係)で出現する、波数の偶数幕に比例した分散関係を持つType-II NG粒子の二種類が存在する。 本研究では二層分数量子ホール系を通じて、上の新奇なスペクトルをもつ、Type-II NG粒子が示す物性の解明を目的とする。そのための第一歩として、二層整数量子ホール系の解析を行った。二層量子ホール系ではスピン・層(擬スピン)の4自由度の競合によってスピンコヒーレンスや層間コヒーレンスといった豊富な物理現象が生じる。 初年度の研究ではランダウ準位占有率v=2二層量子ホール系において、ソフトなSU(4)対称性の破れに伴う低エネルギー励起モード、擬NG粒子及びそれが二層量子ホール系の物性に与える影響を調べた。その結果、線形分散を持つ擬NG粒子が出現することがわかった。尚この擬NG粒子はSU(4)不変の極限では二次分散を示すゆえ、Type-IING粒子である。更にこの擬NG粒子によって生じる位相コヒーレンス、及びそれに伴う面内ジョセフソン超電流についての解析を行うことで、スピン・擬スピンが絡み合った位相コヒーレンスに伴う新しいタイプの超電流、スピンジョセフソン超電流が生じることがわかった。これらはいずれも二層の電荷密度が不均一な状況下において生じる現象であり、実験によって検証できる可能性があるとともに、スピントロニクス等の分野にも大きなインパクトを与えうるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ランダウ準位占有率ν=2二層量子ホール系における擬NG粒子スペクトルを解明するとともに、線形分散を持つ擬NG粒子によって生じるスピン・擬スピンが絡み合った位相コヒーレンスに伴う新しいタイプの超電流を発見し、これらを2件の学術論文として発表出来たことから、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
近年二層量子ホール系における核スピンダイナミックスの研究が行われている。核スピンのラーモア周波数は電子スピンのそれに比べて十分小さく、通常結合しないが、電子スピンの低エネルギー励起モードとは結合をする可能性がある。今後の研究では上の線形分散を持つ擬NG粒子による、核スピン緩和過程への影響を調べる。
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Research Products
(5 results)