2012 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質の生態リスク評価のための新たな無脊椎モデル生物の確立
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12J09538
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
平野 将司 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 甲殻類 / 環境化学物質 / 生態毒性 / エクジステロイド |
Research Abstract |
無脊椎動物固有の核内受容体である脱皮ホルモン受容体(EcR)に着目し、EcRを介したシグナル伝達機構を指標として、環境化学物質のリスクを評価する生態毒性試験を確立することを目的とする。本年度は、甲殻類アミEcRの環境化学物質による転写活性化能を評価するとともに、分子シミュレーションソフトウェアを用いてアミEcRの立体構造を予測し、化学物質との結合状態を解析した。昆虫細胞内でアミEcRを一過的に発現させたin vitroレポーター遺伝子アッセイを構築し、エクジステロイド類によるEcR転写活性化能を調査した結果、EC50値から推定されるエクジステロイド様活性強度はponasterone A>muristerone A>20-hydroxyecdysone>ecdysoneの順であった。そこで、分子シミュレーションソフトウェアを用いてEcRリガンド結合領域の立体構造を構築し、リガンド結合ポケットを予測した。この活性部位とエクジステロイド類とのドッキングシミュレーションからポテンシャルエネルギーを算出したところ、in vitroアッセイから得られたエクジステロイド様活性強度と一致した結果が得られた。さらにin silico解析から化合物との結合に関与すると推定されたアミノ酸について変異導入によるリガンド認識を調べた結果、Tyr452およびAsn547がエクジステロイドとの結合に特に重要であることが明らかとなった。また、EcRシグナル伝達機構の詳細な解明を進めるため、EcRと相互作用するタンパク質の探索を試みた。EcR activation function 2ドメインのペプチドを作製し、プルダウンアッセイによってEcRと結合する核タンパク質を溶出した。これらをMALDI-TOF/TOFによる質量分析に供した結果、LxxLLモチーフを有するタンパク質の同定に成功した。現在、EcRとの相互作用について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度交付申請書における研究実施計画では、多種多様な化学物質のスクリーニングを円滑に遂行するため、計算化学システムを活用し、甲殻類のEcRリガンド結合領域と化学物質とのドッキングシミュレーション、またレポーター遺伝子アッセイの構築および転写活性化能の測定から有害性が推察される候補化学物質を絞り込むことを予定していた。本年度は計画通り、これらスクリーニングシステムを構築し、EcRに作用する化学物質を特定することができた。また、EcRと相互作用するタンパク質の探索にも着手できたことから、順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はおおむね順調に進展したと評価できるが、数百万の化合物ライブラリを用いた化学物質の一斉スクリーニングを行うことが出来なかった。これは数百万の化合物をin silicoでスクリーニングした場合、約1年の計算期間が必要であることが予測されたため、全ての化合物を計算することは現実的ではないと判断した。そこで、より環境残留性・蓄積性、使用量などを考慮し、優先的に評価必要性のある化合物を数千まで絞り込み、一斉スクリーニングを行い、海産無脊椎動物へ影響しうる化学物質を特定する予定である。その他の研究計画について変更する点はないため、EcRシグナル伝達の解明に向け、EcR相互作用タンパク質の同定と機能解析、EcR標的遺伝子の同定を進める予定である。
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[Journal Article] Quantitative analysis of the interaction of constitutive androstane receptor with chemicals and steroid receptor coactivator 1 using surface Plasmon resonance biosensor systems : A case study of the Baikal seal (Pusa sibirica) and mouse.2013
Author(s)
Dau, P.T., Sakai, H., Hirano. M., Ishibashi, H., Tanaka, Y., Kameda, K., Fujino, T., Kim, E,Y. and Iwata, H.
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Journal Title
Toxicol. Sci.
Volume: 131(1)
Pages: 116-127
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Toxicity of triclosan and triclocarban in mysid crustacea (Americamysis bahia).2012
Author(s)
Arizono, K., Uchida, M., Hirano, M., Miura, S., Yoshidu, R., et al.
Organizer
32^<nd> International Symposium on Halogenated Persistent Organic Pollutants, Dioxin 2012 symposium
Place of Presentation
Australia
Year and Date
2012-08-28
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