2012 Fiscal Year Annual Research Report
ASK-p38経路による核内受容体NR4Aファミリーのリン酸化制御と生理機能解析
Project/Area Number |
12J09553
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
渡邊 毅 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2) (80815217)
|
Keywords | ASK1-p38MAPキナーゼ経路 / NR4A2 / 酸化ストレス / リン酸化 / 核外移行 / カスパーゼ非依存 / 細胞死 |
Research Abstract |
ASK1-p38 MAPキナーゼ経路は酸化ストレスをはじめとする細胞内外の様々なストレスによって活性化し、細胞死や免疫反応など多様なストレス応答を誘導する。しかし、ASK1-p38経路を介して種々の細胞応答を誘導する機構については未解明な部分が多い。最近我々はp38の下流の標的分子としてNR4A2を同定した。NR4A2は核内需要体NR4Aファミリーの1つであり、転写因子として細胞分化やサイトカイン産生などに関与することが知られている。一方で、近年、NR4Aファミリーが細胞質において細胞死誘導機能を持つことが報告され、NR4Aファミリーの制御する細胞応答は多岐にわたることが示唆されている。我々は以前に、p38がNR4A2を直接リン酸化し、その転写活性を増強することを報告した。今回、我々は新たに、酸化ストレス刺激により活性化したASK1-p38経路の下流においては、NR4A2がp38にリン酸化されることで、核外へ移行し、細胞死誘導機能を獲得することを見出した。細胞死は、カスパーゼ依存の細胞死、いわゆるアポトーシスとカスパーゼ非依存の細胞死、ネクローシスに大別される。我々は、NR4A2が特にカスパーゼ非依存の細胞死を制御する可能性を見出した。HeLa細胞において、高濃度(3mM)のH_2O_2刺激では、カスパーゼ阻害剤であるzVAD-fmk処理によって抑制されないカスパーゼ非依存的な細胞死が誘導され、NR4A2の発現抑制により、この細胞死が抑制された。さらに我々は、H_2O_2刺激に伴いNR4A2がASK1-p38経路依存的にリン酸化されること、および、このリン酸化によってNR4A2が核外に移行することを見出した。p38によるリン酸化部位をアラニンに置換したNR4A2は、核外への移行が抑制され、同時に細胞死誘導能の喪失も観察された。 以上の結果からNR4A2のH_2O_2刺激依存的な核外移行はASK1-p38経路によるリン酸化によって制御され、カスパーゼ非依存的な細胞死に関与することが示唆された。その一方で、H_2O_2刺激依存的なNR4A2の転写活性の増強は見られなかった。このことは、p38によるNR4A2のリン酸化制御は、状況に応じて転写と細胞死という異なる細胞応答を制御していることを示唆するもの考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初細胞死としてアポトーシスを想定していたが、詳細な解析の結果、まだ未解明の部分の多い、カスパーゼ活性を必要としない細胞死の制御機構を見出すことに成功したから。
|
Strategy for Future Research Activity |
作製したNR4A2のリン酸化ミミック体が細胞死誘導能があることがわかった。このNR4A2のリン酸化ミミック体依存的な細胞死の分子機構を明らかにするために、siRNAスクリーニングを行うことを想定している。
|
Research Products
(3 results)