2012 Fiscal Year Annual Research Report
爆発性テトラゾール‐フタロシアニンの合成と細胞破壊型癌治療薬への展開
Project/Area Number |
12J09706
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
西峯 貴之 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フッ素 / フタロシアニン / テトラゾール / 抗癌剤 |
Research Abstract |
今回我々は癌細胞以外の正常細胞への副作用が少なく,さらに薬剤耐性腫瘍に対する効力を持った新たな抗癌剤として,含フッ素フタロシアニンを基軸とする超エネルギー物質テトラゾールを用いた「腫瘍破壊型殺癌剤」の開発を目指す。テトラゾールは五員環構造にN原子を4つ持つ複素環化合物であり,熱や衝撃に不安定であることから,5位にアミノ基を持つものは車のエアバッグの火薬として使われる。私はテトラゾール環の精密な構造制御と安定性との相関に注目し,医薬品として適度な安定性を有しながら,光やレーザーなどにより,活性化エネルギーを受けることで容易に分解するテトラゾール誘導体が合成出来れば,テトラゾールが分解する際に爆発的に発生する窒素ガスによって物理的に癌細胞を攻撃し,殺癌作用を発揮できるのではないかと考えた。そこで我々が注目した化合物がトリフルオロエトキシフタロシアニンである。テトラゾールと結合することでフッ素官能基から得られる高い電子吸引性によりテトラゾール環内の電子密度を減らし,熱や衝撃に対する安定性を高めることができる。さらにフタロシアニンが持つ癌集積性を利用して標的腫瘍へ輸送し,PDTと同じ要領で光照射することでフタロシアニンがテトラゾールへエネルギーを流し込み,分解を誘発できる。そこで初年度ではフタロシアニンとテトラゾールを化学的に結合することを目標とした。その結果,クリックケミストリーにより合成されるトリアゾール結合をリンカーに選択することでその合成が可能であることを見出した。さらに細胞認識効果を期待した光学活性部位の合成法開発にも着手し,その基幹反応として森田-ベイリス-ヒルマン付加体に対するアリル位選択的不斉トリフルオロメチル化反応を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は今後の研究の足掛かりを掴む非常に重要な段階であったが,目的物の合成,単離に成功したことは非常に大きな一歩である。また,テトラゾールの連結に向けた基幹反応として森田-ベイリス-ヒルマン反応を利用する目途がたった。よって本研究計画はおおむね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
テトラゾール-フタロシアニンの物性や生理活性評価を行い,そのデータを元に,より活性の高い構造を見出すことを次年度の目標とする。さらに大きな展開として,7~800nm付近の長波長の光を吸収するフタロシアニンに代わり,500nm付近の短波長の光を吸収するサブフタロシアニンを起爆トリガーとして用いる予定である。細胞深部に透過しにくい短波長の光を用いることで表面組織の癌細胞に対する生理活性が期待される。さらには合成した化合物群のin vitroでの抗腫瘍活性試験を行い,その有用性を確認する。さらに,連結に使用する森田-ベイリス-ヒルマン付加反応を,生理活性発現が期待されるフッ素化やトリフルオロメチル化にも適応できるか調べるとともに,テトラゾール部位の導入へと展開する。
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Research Products
(5 results)