2013 Fiscal Year Annual Research Report
強相関マンガン酸化物における電子相転移の原子スケール学理の構築
Project/Area Number |
12J09797
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 亮太 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | 強相関マンガン系酸化物 / 走査トンネル顕微鏡・分光 / 酸化物薄膜 / 超巨大磁気抵抗 / 電荷軌道秩序 |
Research Abstract |
マンガン酸化物の標準試料となるLa_<0.7>Ca_<0.3>MnO_3(以下, LCMO)及び本研究の対象物質であるNd_<0.5>Sr_<0.5>MnO_3(以下, NSMO)薄膜を酸化雰囲気において作製し, その表面上にて走査トンネル顕微鏡/分光法(STM/STS)における原子スケールでの構造観察, 電子状態評価を行った. LCMO薄膜は, 強磁性金属状態においても擬ペロブスカイト構造(PC)(1×1)構造を確認できたが, 表面上でのトンネル分光の結果ではエネルギーギャップが観測され, 絶縁化していることがわかった. 詳細な構造解析により, 一軸方向に内部構造をもつp4gmの対称性を有する(√<2>×√<2>)構造を呈しており, p4㎜であるSrTiO_3基板からの対称性の低下が見られた. これが絶縁化をもたらすと考え, 理論計算による絶縁機構の解明の取り組みを開始した. NSMO薄膜は, 繰り返しの成膜によりターゲット組成がずれたNd_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3組成の薄膜が作製された. NSMO薄膜においても成膜時の酸素分圧に依存して強磁性転移を確認し, どちらの状態の表面においてもPC (1×1)構造が見られた. 一方で, 酸素欠損気味の絶縁体サンプルでは非占有状態に特異な(√<5>×√<5>)-R26.6°(以下RT5)構造をもつ輝点が見られた. STSの結果ともあわせて, RT5輝点構造は表面内に隣接する4つのMn原子で共有されており, 輝点の面密度はドーパントの面密度のちょうど1/2の量に相当することがわかった. この現象は酸素欠損気味のLCMO薄膜でも同様に観測され, その輝点面密度はやはりドーパント面密度の1/2となることを確認した. すなわち, 酸素欠損により生じた2つの余剰電子が, 4つのMn原子と結合した状態で局在化し, 遍歴キャリアを媒介とした強磁性発現が阻害されることを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に課題となった強磁性金属相のサンプルの作製とSTM観察に成功し, 電子状態観察も可能となった. 理論計算との共同研究も進行中であり, 新たな原子スケールでの物理の解明が今後期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
(Nd, Sr)MnO_3薄膜の作製は, その組成比をそろえる点に課題を残しているが, おおむね問題ない状況である. まず磁場による金属絶縁体転移を観測し, ナノ構造作製と評価を続いて行う. また, 前年度に観測した強磁性金属相における表面絶縁化の過程を理論計算グループと共同で解明する.
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Research Products
(6 results)