2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J09838
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
青山 尚平 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 暗黒物質 / 崩壊現象 / 宇宙論的線形摂動論 / ボルツマン方程式 |
Research Abstract |
宇宙には、エネルギー密度に換算して、電磁相互作用する普通の物質の5倍以上の未知の重力源である暗黒物質が存在する。 この暗黒物質は未知の素粒子である可能性が高く、自発的に他の粒子に変化する崩壊という性質が存在する可能性がある。崩壊現象は暗黒物質粒子の感じる相互作用により引き起こされるから、崩壊現象の研究により、未だにほとんど解っていない暗黒物質粒子の性質を知ることが出来ると期待されている。 私は宇宙の晴れ上がりより充分後の時期に暗黒物質粒子が2つの異なる粒子に崩壊する崩壊現象を考えた。 崩壊前の粒子を親粒子、崩壊後の粒子を娘粒子1,2とする。この模型におけるパラメータは親粒子の質量m_Mと2つの娘粒子の質量m_<D1>,m_<D2>と親粒子の寿命の計4つである。私は各粒子の運動量分布関数の線形摂動を考え、各運動量分布関数のゆらぎの時間発展を数値的に求めた。そして各粒子の密度ゆらぎの時間発展を求め、そこから暗黒物質の崩壊現象がCMBの温度ゆらぎのパワースペクトルC_lや物質ゆらぎのパワースペクトルP(k)にどのような影響を与えるのかを求めた。先行研究においては、m<D1>=m_<D2>=0やm_<D1>^〓m_M,m_<D2>=0という限られたパラメータ領域に限られていたが、 本研究では、mD2=0かつ娘粒子1の質量が任意の場合で研究を行った。その結果、暗黒物質が宇宙の晴れ上がりより充分後に崩壊する場合、暗黒物質のつくる重力ポテンシャルが浅くなるため、CMBの温度ゆらぎに関しては大スケールの温度ゆらぎが増幅されることがわかった。その増幅の度合いは質量差が大きいほど、また寿命が短いほど大きくなることがわかった。またP(k)に関しては小規模スケールのゆらぎが消滅すること、P(k)のグラフの形状が温かい暗黒物質の場合のそれとは異なることを求めた。 P(k)から一意に求められる物質密度のゆらぎの平均振とその観測的制限との比較により、0.3m_M<m_<D1><0.9m_Mの領域では暗黒物質の寿命は親粒子と娘粒子1の質量比に依らず、2000億年以上であるという制限を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
娘粒子1の質量を任意に取った場合、運動量分布関数の時間発展は格子状に区切った位相空間の各点に関して解く必要がある。これには前例がなく、膨大なメモリーを要する計算コードを開発する必要があったことから、コード開発には予想以上に時間がかかった。また、コード完成後も時間発展の計算において、既存の計算機では計算速度が足りず、暗黒物質の寿命の制限に関しては想定を大幅に越える日数を要した。 しかし、私の科研費で購入した高性能計算機は既存の計算機の実効的に64倍の計算速度を持つため、2013年1月以降は研究は進展しつつあり、来年度は順調な進展ができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在宇宙の構造形成の標準模型であるA-CDM模型は大規模構造形成を極めてうまく説明する。しかし銀河のまわりの暗黒物質の密度分布などはうまく説明できないことが知られている。今後は崩壊する暗黒物質模型が銀河のまわりなど宇宙論的に小規模なスケールの暗黒物質の密度分布説明可能かどうかを研究しようと思う。現在までにこのように宇宙論的に小規模スケールにおける暗黒物質の崩壊現象を記述するボルツマン方程式は完成している。今後はこのボルツマン方程式を数式的に解くコードを開発する。 また、崩壊する暗黒物質に関する研究と並行して最近注目されている修正重力理論に関しても研究して、小規模スケールにおける構造形成を研究しようと思う。
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Research Products
(3 results)