2012 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポーター機能の変動が原因となる臨床での薬物動態変動の定量的予測法の開発
Project/Area Number |
12J09907
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 健太 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 薬物間相互作用 / 薬物トランスポーター / OATP |
Research Abstract |
本研究は、他薬物との併用や遺伝子多型等によってトランスポーターの輸送・発現が変動することで引き起こされるトランスポーター基質の体内動態の変動を、in vitro試験と生理学的薬物速度論モデルに基づいてより精緻に定量的に予測する方法論を確立することを目的にしている。特に、生理学的薬物速度論モデルを用いる解析では、データに対してパラメータの数が非常に多く、解析結果の信頼性が十分に評価されて来なかったという問題点があった。 そこで、信頼性の向上のために、新規のパラメータ推定法であるCluster Newton Methodを導入・開発した。この方法では、パラメータの推定を多数の仮想サンプル(数百~数千)を用いて行うため、初期値依存性が比較的小さい。また、実測データを再現するために許容されるパラメータ群は仮想サンプルの集団として得られる。そのため、実測データから決定されうるパラメータは狭い範囲に収束し、そうでないパラメータは広い範囲に分布したままの状態で最終解が得られるため、系の決定要因となっているパラメータを容易に見つけることができる。 Cluster Newton Methodを、OATPの阻害が原因となるピタバスタチンとシクロスポリンAの相互作用例に適用したところ、ピタバスタチンの肝臓への取り込みクリアランスとKi値が狭い範囲に収束してくることが見出された。この結果はこれまでの当研究室での見解と一致するものであり、クリアランスの決定要因としての肝取り込みの重要性と、相互作用の決定要因としての阻害定数の重要性が強く示唆された。 この方法を用いることで、データに対してパラメータ数が多くなってしまうようなシステム生物学などにおいても、解析の信頼性を向上できるものと期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規の薬物速度論解析法を導入・開発することで、複雑な薬物間相互作用の解析効率・精度を向上させることができたため。 新規の解析法によって多数の薬物間相互作用を解析することを通じて、薬物間相互作用の予測法の構築を目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
特に、複数の相互作用点が関与する薬物間相互作用の強度を、臨床試験を行わずに精度よく予測することを目的とする。また、この予測法の妥当性を更にサポートするため、トランスポーター基質と併用薬それぞれについて薬物動態パラメータの分布を元に仮想的なパラメータをin silicoで発生させる。これを構築したモデルに組み込むことで仮想的な相互作用試験を多数発生させることにより、現行の薬物間相互作用の予測法における様々な仮説の妥当性を検証する。
|