2012 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞未分化性維持機構の知見を利用したがん幹細胞の単離・解析
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12J09944
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
浦 大樹 独立行政法人理化学研究所, 多能性幹細胞研究プロジェクト, 特別研究員(PD)
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Keywords | 白血病幹細胞 / Eed / ポリコーム郡遺伝子 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
がん幹細胞を同定するには、白血病幹細胞内の不均一ながん細胞集団の中のがん幹細胞の割合を増やしてがん幹細胞の特性を知ることが1つの手段だと考えられる。そのためには細胞の不均一性は何によってどのようにもたらされるのかを知る必要がある。これまでの申請者の研究結果より、ポリコーム郡遺伝子の1つであるEedによるエピジェネティックな制御(ピストンH3K27メチル化)によってES細胞が完全な未文化状態から不完全な未分化状態にシフトすることが示唆されており、このエピジェネティックな制御が不均一性を生み出している可能性がある。また近年、がん幹細胞とES細胞は同様なメカニズムによって制御されている可能性が示唆されているため、この現象に着目し研究を行った。 ES細胞が分化する際Eedの発現は減少するが、完全には無くなることはない。Eed欠損ES細胞を分化させると、野生型を分化させたときより外胚葉、中胚葉系にはあまり分化せず、内胚葉系に分化するという異常な分化をしている傾向が見られた。逆にEedを過剰発現した状態で分化させると、すべての胚葉系の発現増加が抑えられたがH3K27meは維持されているのに関わらず完全に抑制できなかった。また、その際にアポトーシスが見られた。これらの結果より、EedによるH3K27meにはある方向の分化を抑制することができるが、それだけでは完全に分化を抑制することができず、他の転写因子の存在や他のピストン修飾の可能性があること、また、エピジェネティックな制御によって分化適応性を獲得できること、また適応できない場合は死ぬというメカニズムが働くことが示唆された。そのことで白血病幹細胞において、エピジェネティックな制御をコントロールすることで不均一性を制御できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エピジェネティックな制御をゲノム全体で知ることができるクロマチン免役沈降シークエンス(ChIP-Seq)の実験系の立ち上げに時間がかかっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
ES細胞で得られた知見をがん幹細胞に応用して研究を行う予定であったが、ES細胞で得られる知見が十分とは言えず、さらにES細胞では研究を進めていくために重要な遺伝子ノックアウトなどの実験方法も簡単に使うことができるため、今後もES細胞を用いて研究も並行して行う予定である。
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Research Products
(2 results)