2012 Fiscal Year Annual Research Report
ライマンアルファ輝線銀河の観測的研究:小質量銀河から探る銀河の成長過程の理解
Project/Area Number |
12J09976
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 王彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 遠方銀河観測 / 銀河進化 |
Research Abstract |
私の研究課題は、現在に比べ宇宙全体の星形成活動がずっと活発であった赤方偏移z~2(宇宙年齢約30億年)の宇宙において、小質量銀河の代表であるライマンα輝線銀河を観測し、若い宇宙での小質量銀河の物理的性質に迫るものである。銀河は誕生時は小さく、合体を繰り返しながら成長すると考えられており、本研究によって銀河の成長過程の理解が大きく進むと期待される。 私は自らが主研究者となり、アメリカの10m望遠鏡であるKeck望遠鏡の近赤外分光装置NIRSPECを用いた観測プログラムを提案し、採択された。観測は私の主導の元行われ、共同研究者の取得した Magellan/MMIRS観測の結果と組み合わせることで、合計7つのライマンα輝線銀河から水素原子のHα輝線の検出に成功した。これはライマンα輝線銀河の近赤外分光サンプルとしては最大である。この分光サンプルを用いた研究を今年度主に行った。特筆すべきは、内2天体からは酸素原子の1階電離した輝線である[OII]輝線、2階電離した[OIII]輝線の検出にも成功した。これによって、ライマンα輝線銀河の重元素量や電離度の測定を初めて信頼度高く行うことが可能となった。その結果、他の遠方星形成銀河と比べ、ライマンα輝線銀河は電離度が高く、また重元素量が低いことが観測的に示された。この結果は、ライマンα輝線銀河が形成のごく初期段階にいること、更には宇宙再電離に必要な電離光子を効率よく銀河間空間に供給した源である可能性を示唆し、ライマンα輝線銀河の物理状態や宇宙進化の中での役割を知る上で重要な情報をもたらした。この研究結果は私が筆頭著者となり論文としてまとめられ、米国の査読誌 (The Astrophysical Journal)への掲載が既に決まっている。また、「日本天文学会年会」や国内外のすばる望遠鏡利用者が集まる「すばるユーザーズミーティング」において、その研究成果を発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私が主研究者となって行ったKeck望遠鏡を用いたLyα輝線銀河の分光観測の解析結果は、当初の実施計画通り、私を筆頭著者とする英文査読誌にまとめられた。また自らを主研究者としてすばる望遠鏡へ提案していた近赤外分光装置FMOSを用いた観測提案は無事に採択され、2012年12月に私の主導のもと観測も無事遂行された。良質な分光データは現在解析中である。また私の構築したLyα輝線銀河サンプルを用い、これら銀河の形態や空間分布の研究が共同研究者と協力し合いながらスタートした。研究がまとまり次第、私も含めた共著で査読誌へ投稿する予定である。すべて当初の計画通り研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
私が主研究者となって観測したFMOSの巨大な分光観測データの解析を済ませ、その結果を査読誌へ投稿する。平成24年度は他にもヨーロッパの大望遠鏡VLTのX-shooterやすばる望遠鏡のFMOSの追観測の観測提案(いずれも私が主研究者)が採択され、その観測が今年度には行われる。これら潤沢なデータを自らが中心となって解析し、論文としてまとめあげる。これはLyα輝線銀河の基本的な性質を世界に先駆け徹底的に調べる論文となる。並行して、私が構築したLyα輝線銀河サンプルを用い、共同研究者との協力のもと、Lyα輝線銀河の形態や空間分布、光度関数(どのような光度の銀河がどのくらい存在するかを表す)といった統計的な研究も行い、Lyα輝線銀河の銀河進化における役割の解明に大きな知見を与える研究を行っていく。
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