2013 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの障害者差別禁止法をめぐる障害者運動の比較研究--「われわれ」論・再考
Project/Area Number |
12J10011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 悠里 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 障害者差別禁止法 / 障害者差別解消法 / 東アジア / 香港 / 韓国 / 障害者運動 / 社会運動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、さまざまな利害を持つ人びとが「われわれ」を作り出す実践を、障害者差別禁止法をめぐるとりくみから見出すことである。これまで、東アジア(香港・韓国)の既存の障害者差別禁止法における障害者運動を対象としてきた。しかしながら、2013年には日本で、障害者差別解消法が成立した。そこで、これまでの香港・韓国に加え、日本についても研究対象とすることとした。 2年目の今年度は、理論的検討と韓国および日本を中心として、質的調査をおこなった。質的調査としては、障害者団体の活動における参与観察やインタビュー調査などをおこなった。本研究は、障害者差別禁止法制定以降のとりくみを主な対象としているが、法制定以前のとりくみが法制定以降のとりくみに影響を与えることが十分に考えられるために、日本の活動の参与観察をおこなった。理論的検討としては、欧米との比較という視点を取り入れ、東アジアの障害者運動の特徴を見出すこととした。 本年度の知見として、欧米との比較により、東アジアの障害者運動の特徴をみいだすことができた。欧米では、公民権運動や女性運動が成立し一定の成果を遂げた後に、その後障害者運動が誕生した。一方で、東アジアにおいては、女性運動や障害者運動、その他マイノリティによる運動が、1990年代以降に同時期に成立している。そして、運動の成果もまた、いまだ十分に現れているとは言えない。そうした状況において、女性やその他のマイノリティは、自分たちの利益が未来に得られることを期待して、障害者運動に参加しているといることがわかった。1年目からの蓄積である、香港および韓国でおこなった質的調査と理論的検討によって得られた知見を、日本の状況と照らし合わせることによって、今後、知見の精緻化を図りたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質的調査を継続的におこない、その成果に基づいて理論的な枠組みの構築をおこなうことができている。また、日本についても、新しく調査対象として取り上げ、調査をおこなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、続けて質的調査をおこなっていく。質的調査については、これまで障害者団体を中心にインタビューを積み重ねてきたが、女性団体や労働運動団体などにもインタビューの対象を広げていく予定である。こうした団体とはすでに接触を図っている。また、現状を反映して、日本の障害者差別解消法をめぐる障害者運動のとりくみについても今後、質的調査をおこなっていく。
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