2012 Fiscal Year Annual Research Report
TeVガンマ線超新星残骸における宇宙線粒子加速機構の研究
Project/Area Number |
12J10082
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐野 栄俊 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙線 / ガンマ線 / 超新星残骸 / RX J1713.7-3946 / Vela Jr. / シンクロトロンX線 / 星間ガス |
Research Abstract |
研究代表者は、100年来の謎である宇宙線陽子の起源(どこで加速されているか)について、その有力候補であるTeVガンマ線を放射する超新星残骸(SNR)について観測的研究を遂行した。TeVガンマ線は、宇宙線の大部分を占める陽子、もしくはその1/100程度存在する電子が起源とされ、これを切り分ける為には、SNRに付随する星間ガス分布を調べる必要がある。なぜなら、陽子起源ガンマ線の場合、TeVガンマ線の強度は星間ガスの密度に比例するからである。従って、両者の分布に相関が見られれば、宇宙線陽子起源説の強い傍証となる。研究代表者は、4つのガンマ線SNRに付随する星間ガスを定量し、ガンマ線の起源を明らかにすることで、宇宙線陽子の加速現場特定を目指した。今年度の成果は下記の通りである。 [A]2つのTeVガンマ線SNR RXJ1713.7-3946とVela Jr.について、星間ガスを定量しガンマ線との比較を行った。結果として、両者の間に非常に良い空間的相関が見られ、これらのSNRで宇宙線陽子が加速されているという観測的結果を世界で初めて示した。またこの時、宇宙線陽子のエネルギーは10^<48>erg程度であり、超新星爆発のエネルギーの0.1%が、~2000年の間に宇宙線陽子に供給されたことを明らかにした。 [B][A]で定量された星間ガスについて、宇宙線電子から放射されるシンクロトロンX線放射との比較も行い、両者の緊密な関係を明らかにした。具体的には、星間ガス周りでのX線増光を発見し、理論計算との比較から、これがSNR衝撃波と星間ガスの相互作用によるものであると結論した。さらに、RXJ1713.7-3946については、星間ガスが多い領域でも効率良く宇宙線電子が加速されていることを発見した。これは、従来の理論モデルでは説明できず、SNRにおける新たな宇宙線加速機構の必要性に言及した。 これらの成果は、TeVガンマ線SNRにおける宇宙線陽子の加速を、世界で初めて観測的に決定づけた点で意義がある。さらに、宇宙線加速の理論モデルにも改訂もしくは増補を迫る、画期的な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
宇宙線陽子起源解明のための研究対象とした4つのSNRのうち、既に2つについては解析が完了しており、残りの2つについても初期解析は終了し論文化の見通しがたっている。さらに、前項で述べた従来の理論モデルでは説明ができない現象を発見したことは、予期していなかったことであり、宇宙線加速機構のより詳しい理解について、大きな前進が望める成果がでたといえる。これらの点から、(1)当初の計画以上に進展している、と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目標を達成するために、残り2つのSNRについてもTeVガンマ線と付随する星間ガスの定量的な比較を行い、宇宙線陽子加速の普遍性について探る。研究計画は問題なく予定通りに遂行できる。また、今回発見された宇宙線電子の高効率加速については、他の天体で同様の事例がないか探査することはもちろん、理論モデルの検討も行う。具体的には、現在すでに提案されている新しい宇宙線加速機構モデルを精査し、それらで説明可能かどうかを検討する。もし出来ない場合は、理論研究者らと共同で新たなモデル構築を行う。このとき申請者は、観測から得られた物理量などを提供することで貢献する。上記の成果は学術誌にまとめ、天文・物理学会などで広く講演を行う予定である。
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Research Products
(17 results)