2012 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性アリールアミノホスホニウム塩を用いるイオン性ブレンステッド酸触媒の化学
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12J10115
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木下 奈津子 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ホスホニウム塩 / ブレンステッド酸 / 有機触媒 / 不斉合成 / 協働触媒 / 有機合成化学 |
Research Abstract |
イオン性ブレンステッド酸は、電気的に中性の酸とは異なる活性化機能を示すことが期待されている。本研究では、独自に開発したキラルアリールアミノホスホニウムバフェートを触媒として広範な不斉合成反応に適用することで、イオン性ブレンステッド酸に特有の機能を見出しその起源を明らかにする。また、研究の過程で得られた知見を基に電気的に中性の酸が促進できない反応の開発につなげることを目的とした。前年度、本触媒と有機塩基が協働する触媒系を開発し、ニトロオレフィンへの高エナンチオ選択的チオ共役付加反応を達成したことを基盤に、今年度も引き続き協働触媒系を開拓し、今までにない結合形成反応の実現に結びつけることを目指して研究を行った。その結果、キラルテトラアミノホスホニウムバフェートと遷移金属錯体を用いた新たな協働触媒系を見出し、高いエナンチオ選択性の獲得に成功した。反応機構の詳細は未だ明らかになっていないが、本反応では、ホスホニウム塩によるN-スルホニルイミンの活性化と、遷移金属触媒の作用により生成する反応活性種が必須であり、いずれが欠けても反応が進行しないことを実験的に確認している。今回発見した反応は、非イオン性ブレンステッド酸を用いても効率的に進行せず、イオン性ブレンステッド酸に特有の反応であると言える。すなわち、既存のブレンステッド酸触媒を用いる反応とは一線を画した新規反応であり、イオン性ブレンステッド酸が非イオン性の酸とは異なる活性化機序を有することを示す実例となり得る点に興味が持たれる。今後、イオン性のブレンステッド酸の化学を深化させるためには、本反応の機構を詳細に理解することが極めて重要と考えており、現在集中的に検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来注目されてこなかった酸触媒が持つ電荷に注目した反応開発は、背景技術が無いために困難が予想されたが、イオン性のブレンステッド酸に特有の反応系を見出した。触媒機構の詳細は未だ明らかとは言えないが、反応系の新規性等を鑑みて順調な進展と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、今回発見した反応系の機構解明に集中的に取り組むことで、イオン性ブレンステッド酸による分子活性化機構についての理解を進める。また、解明した反応機構に基づいて、新たな触媒システム、特に二種類以上の有機分子が協働的に触媒機能を発揮する反応系を設計する。
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Research Products
(2 results)