2013 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性アリールアミノホスホニウム塩を用いるイオン性ブレンステッド酸触媒の化学
Project/Area Number |
12J10115
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木下 奈津子 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ホスホニウム塩 / ブレンステッド酸 / 有機触媒 / 不斉合成 / 協働触媒 / 有機合成化学 |
Research Abstract |
イオン性Brφnsted酸は、電気的に中性の酸とは異なる活性化機能を示すことが期待されている。本研究は、独自に開発した光学活性アリールアミノホスホニウムバフェートを、触媒として広範な不斉合成反応に適用することで、イオン性ブレンステッド酸に特有の機能を見出しその起源に迫ろうとするものである。また、研究の過程で得られた知見を、電気的に中性の酸とは異なる触媒作用に基づく反応の開発につなげることを目的とした。本研究では既に、イオン性Brφnsted酸と有機塩基が協働する触媒系を開発し、ニトロオレフィンへの高エナンチオ選択的チオ共役付加反応を達成している。今年度はこの成果を基盤に、引き続き二つの触媒が協働的に作用する反応系を開拓することで、過去に例の無い結合形成反応の実現を目指して研究を行った。その結果、光学活性アリールアミノホスホニウムバフェートと可視光レドックス触媒を用いた協働触媒系を見出し、高いエナンチオ選択性でN-スルホニルイミンのα-アミノメチル化を達成した。また、反応機構の解析により、本反応ではキラルなホスホニウムイオンによるアニオンラジカルの精密な認識および制御により高いエナンチオ選択性が発現していることを明らかにした。このようなイオン性フレンステッド酸によるアニオンラジカルの制御能は、静電的相互作用と水素結合を介した強いアニオン認識能に起因するものであり、実際に非イオン性の酸は効果的でないことを確認している。本成果は、イオン性ブレンステッド酸が非イオン性の酸とは異なる触媒機能を有することを示す実例となる点で高い学術的価値を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Brønsted酸のイオン性が触媒としてのふるまいに強く影響する反応系の開拓に取り組み、イオン間力を介した分子認識を鍵とする新たな触媒的反応系を見出した。本反応は、従来ほとんど注目されてこなかった、酸が電荷を持つことの意味を実証する成果として特筆すべきものである。加えて、二種の触媒が協働する触媒システム、すなわち可視光増感剤である金属錯体の触媒作用によるラジカル活性種の生成とキラルイオン性酸触媒によるアニオンラジカルの制御が連続的におこる点で特徴的である。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(1 results)