2012 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチド鎖間にSS結合を有するインスリンの効率的なフォールディング手法の開発
Project/Area Number |
12J10124
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
荒井 堅太 東海大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | インスリン / SS結合 / 鎖間SS架橋法 / 酸化的フォールディング / DHS^<ox> / 反応速度論解析 |
Research Abstract |
本研究はペプチド鎖間ジスルフィド(SS)架橋法によって天然型インスリの簡便且つ効率的な酸化的フォールディング手法を確立することを目的としている。平成24年度は交付申請書に記載した「研究の目的」に従い、(1)インスリンの構成ペプチドであるA鎖およびB鎖の分子内SS形成反応挙動の解明と生成SS中間体の構造特性の解析、(2)インスリンA鎖およびB鎖を用いたペプチド鎖間SS架橋法によるフォールディングの条件検討を主要課題として設定し研究を行った。 (1)の研究課題は「研究実施計画」に従って実験を行った。SS結合が開裂された還元型のA鎖およびB鎖に、独自に開発した強力なSS形成試薬(DHS^<ox>)を添加しSS結合形成反応を開始した。反応速度論解析を行うことで適用pH条件におけるA鎖およびB鎖のSS形成挙動を詳細に把握することに成功した。特に重要な知見は、弱塩基性条件下におけるインスリンB鎖の分子内SS形成速度は還元型B鎖の構造化によって著しく低下するということある。これはB鎖の分子内SS形成反応を塩基性条件下において速度論的に阻害することで、A鎖-B鎖間SS架橋を優先的に促せることを暗示する重要な結果である。 先に示した有益な結果に基づき、続いて課題(2)の天然型インスリンを得る為のペプチド鎖間SS架橋法によるフォールディング反応の条件検討を行った。温度、pH、添加剤などを変化させながら、フォールディング収率、SS中間体の生成量に基づいて条件の最適化を行った。現在のところ、フォールディング収率は37%を達成している。本反応は、添加剤およびpH条件に工夫を凝らしているが、基本的にインスリンA鎖とB鎖をモル比1:1で混合しただけであり、従来法と比較すると非常に簡便な方法である。A鎖とB鎖の直接的なカップリング法によって天然型インスリンをこれほどの収率で得たという前例はなく、この実験結果はすでに高い評価に値するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで当研究室で確立してきた酸化的フォールディング機構解析に関する研究技術をうまく適応でき、分子内SS形成挙動に関する研究が滞りなく進んだ為。また、このときの研究結果が鎖間SS架橋法によるインスリンの酸化的フォールディングの戦略を練る上での鍵となり順調に研究が進行している為。
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Strategy for Future Research Activity |
反応における小分子添加剤の選択と濃度をさらに検討することで更なるフォールディング収率の向上が見込まれており、条件の最適化を優先して行っていく予定である。さらに、確立したフォールディング条件をインスリンと構造的に酷似したペプチドホルモン、リラキシンにも応用し、本手法の汎用性を示す予定である。良好な収率結果が得られ次第、学術論文へ投稿する。さらに、マイクロリアクターを用いたマイクロスケール反応場におけるフォールディング反応を計画してる。現行のフォールディング手法はインスリンA鎖およびB鎖の効率的な鎖間SS架橋法に最大の独創性をもつ。このような分子間反応はより小さな反応場を利用し、分子間接触頻度を上げることでより効率よく反応が進行するものと考えられる。このような実験を実際に行う為、本年度4月よりマイクロリアクター内における有機合成研究を行っているイギリス、カーディフ大学のThomas Wirth教授の研究室に滞在し、その研究ノウハウを学ぶと共に、実際にフォールディング反応への応用を行う予定である。
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Research Products
(7 results)