2013 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母のサーチュインを介した細胞老化制御機構に関する研究
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12J10171
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
亀井 優香 長浜バイオ大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞老化 / 分裂寿命 / トランスクリプトーム / 出芽酵母 |
Research Abstract |
出芽酵母は不均等な細胞分裂(出芽)によって増殖するため、1個の細胞について分裂寿命(一つの細胞が老化して死ぬまでの出芽回数)を測定することができる。細胞レベルの老化・寿命研究モデル生物として非常に有用であり、高等生物に先立って多くの寿命遺伝子が出芽酵母を用いて発見されてきた。出芽酵母の長寿遺伝子SIR2はよく調べられており、サーチュインとして広くヒトに至るまで保存されている。本研究では、遺伝学、トランスクリプトミクスおよびメタボロミクスの手法を駆使してサーチュインを介する分裂寿命決定機構、および老化の進行に伴う細胞の変化を明らかにすることを目指した。今年度は以下の研究課題に取り組んだ。 老化細胞のトランスクリプトームおよびメタボローム解析による細胞老化機構の解明 野生型株から0、4、7および11世代の老化細胞を回収し、これらの細胞の細胞内代謝物と全遺伝子の転写量を調べた。細胞集団の中で死細胞が現れ始める11世代付近の細胞における代謝の変化が代謝酵素遺伝子の転写レベルの変化が原因であると考えられたので、7世代から11世代にかけて転写量が増加した遺伝子に着目した。これらには定常期で転写が誘導される遺伝子が多く含まれており、老化細胞における転写の変化は定常期における転写制御機構を共有していることが示唆された。特に転写量の増加率の大きかった遺伝子の中で、定常期で転写誘導されビタミンB6の合成酵素遺伝子であるSNZ1に着目した。SNZ1遺伝子を破壊した株の分裂寿命は野生型株よりも短寿命であり、SNZ1遺伝子は新規の寿命遺伝子であると結論づけた。老化細胞におけるSNZ1遺伝子の転写因子を知るために、定常期における転写活性化因子をコードするADR1、GIS1およびMSN2/4遺伝子に着目したが、どの遺伝子破壊株の老化細胞でもSNZ1遺伝子の転写が誘導された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サーチュインの機能を調節する代謝経路の解明については既存の分裂寿命測定系を使った実験系が確立できず、目的まで到達していないが、細胞老化が始まる時期とその変化の内容を明らかにしたことは進展であると考えるため。
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Strategy for Future Research Activity |
老化段階で転写誘導されるSNZ1遺伝子が寿命遺伝子であることがわかったが、この遺伝子がどのように老化の進行に関わり、寿命を決定しているかを明らかにしたい。また、老化細胞におけるSNZ1遺伝子の転写因子を同定することにより、老化初期段階における転写制御機構の一端を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(2 results)