2012 Fiscal Year Annual Research Report
減数分裂の連続的な分裂期を保証するAPC/C制御機構の解析
Project/Area Number |
12J10270
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青井 勇樹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 減数分裂 / 細胞周期 / CDK / サイクリン / APC/C / 分裂酵母 / 転写因子 |
Research Abstract |
減数分裂において核分裂の回数は厳密に2回に限定される。これにより、2倍体の生殖細胞は倍数性が半減した1倍体の配偶子を生み出すことが可能となる。この特殊な細胞周期制御を達成するため、APC/C(後期促進複合体)は減数分裂特異的な制御を受けると考えられている。分裂酵母の減数分裂におけるAPC/Cの制御機構について、本年度大きな進展のあった点について述べる。 (1)sms5破壊株とfzr7破壊株は減数第二分裂の後にふたたび分裂期を経験する。"減数第三分裂"と呼ぶこの異所的な分裂期では、多くの紡錘体微小管は単極性であり、微小管の極であるSPBの複製・分離や染色体の分離は部分的に起きた。 (2)sms5遺伝子産物(Sms5タンパク質)は減数分裂特異的に発現する転写因子である。fzr1はSms5の重要なターゲット遺伝子であることが判明した。sms5破壊株ではfzr1の転写量が減少し、またSms5はafzr1遺伝子のプロモーター領域に結合した。 (3)fzr1遺伝子産物(Fzr1タンパク質)は減数分裂特異的に発現するAPC/Cの活性化因子である。s〃is5破壊株ではFzr1の発現量が減少しており、上記(2)の転写量解析の結果に合致した。APC/Cの分解ターゲットであるサイクリンCdcl3の発現量は、sms5破壊株において減数第二分裂の後も蓄積することが判明した。Cdc13の分解は分裂期の終了に必須である。sms5破壊株およびfzr1破壊株では、減数第三分裂の時期にCdc13はSPBに局在した。これらを総合し、Sms5はfzr1遺伝子の転写を活性化してAPC/CによるCdc13の分解を誘導し、これにより減数第二分裂の後に細胞がふたたび分裂期に入ることを防ぎ、機能的な配偶子の形成を保証するというモデルを提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究結果により、Sms5タンパク質がfzr1遺伝子の転写を直接的に制御すること、この転写制御は減数第二分裂の終了に不可欠であることを示した。また当初の計画には含まれていなかった、減数第三分裂という異常の詳細な観察をおこなうことにより、この時期の染色体や紡錘体微小管は分裂期特有の構造をとることが明らかとなった。現在、以上の結果をまとめた論文を投稿中であり、当初の計画以上に大きな進展があったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、減数分裂における連続した分裂期を引きおこす十分条件はなにか、という点に焦点をあてて研究を進める。 APC/Cは減数分裂の進行にそって阻害と活性化をうけることが本研究より明らかになっている。APC/Cの活性を人工的に制御するための実験系を構築し、APC/Cの活性調節が分裂期を連続させるために必要十分であるか検証する。また、分裂期の終了に関与することが本研究の予備結果より示唆されているPP1の役割についてもあわせて検討をおこなう。以上の実験により、分裂期を2回連続させる特殊な細胞周期制御が、APC/CやPP1によっておこなわれるというモデルの実証を目指す。
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