2012 Fiscal Year Annual Research Report
アミド基を導入したポルフィリン錯体による酵素様反応の発現
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12J10344
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山西 克典 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸素分子活性化 / ポルフィリン錯体 / 金属酵素モデル / 不活性分子活性化 / ヒドロキシル化 / 酸化的開裂 / プッシュ-プル効果 / 酵素様反応モデル |
Research Abstract |
酸素分子は高い酸化力を有する酸化剤であるが、通常の条件で有機分子と反応することは無く、速度論的に極めて不活性な分子である。しかし、ヘムオキシゲナーゼどの酸化酵素は、酸素分子を活性化させ、ポルフィリン環の炭素-炭素結合の酸化的開裂や外部基質の酸化を効率的に行っている。これらの金属酵素の活性中心には、ヘムと呼ばれる鉄ポルフィリンが存在し、この高い酸化反応の再現と酸化触媒への応用を目的として、多くのポルフィリン錯体が合成されてきた。しかし、実際に、この金属酵素の反応性を再現した例はほとんど無く、酸素分子の活性化とその酸化反応の再現は未だに困難な課題とされている。 本研究は、アミド基を導入したポルフィリン(amtpp)を有する金属錯体を合成し、酸素分子を活性化して酸化反応の進行と、そのメカニズムの解明を目的としている。初年度は、鉄イオンを金属中心に有するFe-amtpp錯体の合成、軸配位子が酸化反応に及ぼす効果の解明に焦点を絞って研究を進めた。 目的とするFe-amtpp錯体は、この目的化合物が空気に不安定であるため3価のFe(III)-amtpp錯体を合成し、これをコバルトセンで還元する事で合成することに成功した。また、種々の軸配位子がを用いて、Co-amtpp錯体の酸素分子の活性化に与える影響を検討し、その塩基性度と立体効果が、その反応性に影響することを見いだした。例えば、軸配位子の塩基性度が低いと酸素分子の活性化は進行せず、コバルト中心が3価に酸化される反応のみが進行した。また、軸配位子にかさ高い置換基を持つ1,2-ジメチルイミダゾールを用いると、酸素分子がヒドロキシル基として、ポルフィリン環に付加されることをみいだした。これは、ヘムオキシゲンザーゼが起こす最初の反応ステップを模倣した世界で初の例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた鉄を導入したFe-amtpp錯体の合成に成功し、さらに、その反応メカニズムの解明につながる軸配位子の効果を明らかにしている。さらに、軸配位子の立体効果を検討する過程で、酸素分子がポルフィリン環にヒドロキシル基として導入されることを見いだしている。ヘムオキシゲナーゼの最初のステップを再現した世界で初の例であり、高く評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄ポルフィリン錯体Fe-amtppの合成に成功し、予備的な酸素との反応では、酸素分子の活性化は進行せず、鉄中心が3価に酸化される1電子酸化反応の進行が分光スペクトルの測定結果から示唆された。如何にして、この1電子酸化反応を抑えて酸素分子を活性化させるかが、今後の研究課題の一つとなる。また、コバルト、鉄以外で、マンガンやニッケルなどの酸素に対して親和性を示す金属イオンを導入したamtpp錯体の合成と、その酸化反応の検討が望まれる。
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Research Products
(2 results)