2012 Fiscal Year Annual Research Report
P-gp阻害活性を有する高酸化度天然物の効率的全合成法の確立
Project/Area Number |
12J10348
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
轟木 秀憲 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 全合成 / テルペン類 |
Research Abstract |
4-ヒドロキシジノウォールは、三環性のジヒドロ・β-アガロフラン骨格が多数の酸素官能基によって修飾された構造を有し、また薬剤排出トランスポーターであるP-gpの阻害活性を有する。その効率的全合成法の確立に向け、本年度前半ではまず、2位および15位の酸素官能基がない類縁体であるレイサンチンAをモデル分子として合成研究を行った。 その結果、構築に困難が予想された10位4級炭素は銅を用いた1,4-付加反応によって効率的に構築することができたものの、その基質合成のために保護基の導入など多段階を要した。またその後の変換において、上記1,4-付加反応の立体選択性発現に重要な役割を果たした9位環状アセタールの加水分解を種々検討したが、望まない脱水反応が同時に進行するのを防ぐことはできなかった。 以上の知見を基盤として、本年度後半では、新規な合成計画を立案して4-ヒドロキシジノウォールの合成研究を行った。 まず既に構築法の確立されているフェノール誘導体を酸化的に脱芳香環化することで、5位4置換炭素を効率的に構築した。続いてこの酸化によって生じたジエンとプロピオール酸メチルとのDiels-Alder反応によって、10位4級炭素の効率的な構築に成功した。本研究中で新規に見出したセシウム塩を用いる条件によって、先の酸化で構築したエポキシドを温和な条件下にて求核的に開環し、続いて5位と11位の二つのヒドロキシ基間で酸性条件下脱水縮合を行うことで、非常に酸化度の高い基質においてC環の構築に成功した。最後に4位に立体選択的にメチル基を導入することで、多くのアガロフラン骨格に共通して存在する、4,5,10位の連続4置換炭素を立体選択的に構築することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目標であった4-ヒドロキシジノウォールの全合成は達成できなかったため。しかし、構築に困難が予想された4,5,10位の3つの連続した4置換炭素の構築は完了できたので、一つの大きな課題はクリアできたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
残る最大の課題は、Diels-Alder反応で生じた二つのアルケンの位置選択的な酸化開裂、および天然物に不要な二つの炭素原子の除去である。今後はこれらの課題に取り組みながら、適切な酸化段階の上昇と位置選択的なアシル化を適宜行い、4-ヒドロキシジノウォールの全合成を達成する予定である。 以上の経路によって4-ヒドロキシジノウォールの全合成が達成できれば、確立した経路は、2年目の目標である酸化段階の異なる類縁体レイサンチンBと13-デオキシエボニノールの合成へと展開できるものと予想している。
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Research Products
(4 results)