2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J10354
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
包 明久 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | X線結晶構造解析 / RNAi |
Research Abstract |
本研究では昆虫Dicer-1およびDicer-2のhelicaseドメイン、もしくは全長の結晶構造解析を行うことで、RNAi経路における小分子RNA生合成過程の分子基盤を明らかにすることを目的としている。 本年度の進捗としては、申請した研究実施計画に従って結晶化に適したコンストラクトの作製を進めている。ネッタイシマカAedes aegypti,ショウジョウバエDrosophila melanogaster,コクヌストモドキTribolium castaneumのDicer全長あるいはhelicaseドメインの発現コンストラクトを作製し、特にコクヌストモドキDicerのhelicaseドメインにSUMOタグを付加することで大腸菌での発現・精製が可能になることを見出した。このコンストラクトを用いて大量発現をおこない、精製系を確立することに成功した。 精製したタンパク質はプロテアーゼによる分解を受けやすい、溶液中でのアグリゲーションが起こりやすいなど不安定な性質を持つことが明らかとなったが、基質と予想されるRNAとの複合体形成により安定性が若干向上した。現在このコンストラクトを用いて、単独での結晶化またはATP加水分解アナログやRNAとの共結晶化実験を行なっている。市販の結晶化キットと結晶化ロボットを用いたハイスループットなスクリーニングにより、各サンプルについて数百条件ずつの結晶化条件を試したが、現在までにタンパク質の結晶は得られていない。今後、コンストラクトの改善やターゲットとする生物種の変更などにより、結晶を得ることを目指していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、交付申請書に記載した昆虫DicerのX線結晶構造解析を目指した発現コンストラクトの作製と精製系の確立を達成し、結晶化条件のスクリーニングを行なっているところである。したがって申請した研究計画と比べて目立った遅れはないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり本研究課題は研究計画にしたがって順調に進展していると考えられ、今後は予定通りにタンパク質の結晶化を行い、放射光施設でのX線回折実験を行なっていく。ただし、得られているタンパク質はやや不安定であり、このまま結晶が得られるとは限らないため、更なる結晶化コンストラクトのスクリーニングもおこなう。大腸菌の発現系では精製できなかったコンストラクトも真核細胞を用いた発現系ならば精製できる可能性もあるため、発現系の見直しも行う予定である。また、昆虫Dicerは主にショウジョウバエでのみ生化学的な実験が行われてきている背景があり、ショウジョウバエ以外のタンパク質で結晶化ができれば、その生物種のDicerを用いた生化学的な解析も行なっていく必要がある。
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