2012 Fiscal Year Annual Research Report
逆遺伝学的手法を用いた収量・バイオマス生産向上に関わる遺伝子の網羅的探索
Project/Area Number |
12J10427
|
Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
安達 俊輔 独立行政法人農業生物資源研究所, イネゲノム育種研究ユニット, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 個葉光合成 / マップベースクローニング / 逆遺伝学 |
Research Abstract |
研究代表者はイネの収量・バイオマス生産向上に関わる生理的および遺伝的要因の解明を目指して研究を行っている。平成24年度は、生育初期におけるバイオマス生産にとって重要な葉のサイズに関わる量的形質遺伝子座(QTL)の同定と、全生育期間を通じて重要となる葉の光合成能力に関わる遺伝子の特定およびその機能解明を目的として研究を行った。その結果、前者についてはコシヒカリ/Nabaの染色体断片置換系統を用いることによって、葉幅を制御するQTLを第3,6,8染色体に、葉長を制御するQTLを第3,6,11染色体に見出した。後者についてはコシヒカリ/ハバタキの交雑後代を用いることによって、光合成能力を高める染色体領域を第8染色体および第11染色体のそれぞれ11kb、27kbの領域に絞り込んだ。また第8染色体上の遺伝子は気孔伝導度を高める作用、第11染色体上の遺伝子は葉身窒素含量を高める作用をそれぞれ有しており、このことが光合成速度を高めているもの推察された。さらに第8染色体の原因遺伝子はイネの開花調節に関わるDTH8(Wei et al. 2010)である可能性が示唆された。光合成能力を制御する遺伝子の実態に迫る本研究成果は、これまで難しいとされてきた光合成能力の育種的改良に道を拓くものである。また本結果は、過去に多くの研究者が挑戦したもののいまだ統一的な見解が得られていないイネの光合成能力を制御する遺伝的メカニズムの解明に、大きく近づいたという点からも重要であると考えられる。この遺伝的メカニズムを詳細に明らかにすることによって、イネ光合成能力をさらに大幅に改良するための研究戦略の構築につながるものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネの光合成能力を制御する遺伝子の実態解明に向けて着実に研究が進展している。一方、順遺伝学と逆遺伝学の融合による新たな遺伝子単離手法の開発については現在のところ達成の見通しは不十分で、研究の加速化が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
更なるQTLマッピングと逆遺伝学的手法を組み合わせることによって、QTL領域に存在する原因遺伝子の迅速な単離を目指す。さらに、特定した遺伝子については相補性検定による機能証明とともに、発現解析や光合成関連形質の評価によって、遺伝子の詳細な作用機構の解明を行う。また見出した遺伝子の収量ポテンシャルへの寄与を定量的に評価する予定である。
|
Research Products
(2 results)