2013 Fiscal Year Annual Research Report
π共役金属錯体二次元ナノシート半導体の界面創製と構造-物性相間
Project/Area Number |
12J10449
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神戸 徹也 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナノシート / メタラジチオレン / 酸化還元特性 / 導電性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、金属イオンと配位子とを組み上げることにより共役系金属錯体ナノシートを構築し、ボトムアップ構築及び構成要素の物性を利用することにより、ナノシートの特性を精密に制御する達成することにある。 昨年度までの研究において、構成要素としてNi(II)とベンゼンヘキサチオール(BHT)を用いた、ニッケルビスジチオレンナノシートの構築を達成している(J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 2462.)。 本年度において、ビスジチオレン錯体部位の酸化還元特性を解明し、制御することで、ナノシートの電子状態の制御を達成した。多層のニッケラジチオレンナノシート(micro-1)に対し、TCNQアニオンラジカルによる還元、とアミニウムラジカルによる酸化を行い、還元体(reduced-1)と酸化体(oxidiZed-1)を合成した。XPSの硫黄のスペクトルを解析することで、redueed-1とoxidized-1はそれぞれ全てのビスジチオレン部位が-1価および0価のナノシートであることが分かった。 この酸化還元特性を利用し、ナノシートの二次元的な電子特性の制御を行った。四端子を用いたvan derPawu法に利用することで、それぞれの価数における電気伝導性を測定した。その結果、0価のナノシートにおいて38Scm^<-1>という極めて高い値を示した。さらにこの電気伝導性は酸化状態により5000倍以上変化できることが分かった。こうしたスイッチング特性を有するボトムアップ型ナノシートはこれまでに例がなく、電子デバイスへの応用が可能な初の例である(日本結晶学会2013, 55, 323. 他)。 また、この極めて高い電気伝導性を示したoxidized-1の電子状態の解明を、理論計算および光電子分光測定から行った。その結果、oxidized-1は金属的な電子状態を有することが判明し、これが高い電気伝導性の要因であると推察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の目的である物質である金属錯体による共役系ナノシートの構築を達成し、その機能性の発現に成功した。これらの成果は既に論文(J. Am, Chem. Soc. 2013, 135, 2462., 日本結晶学会2013, 55, 323.)として報告し、国内外での発表も多数こなしている。これだけでなく、さらに分子軌道計算や光電子分光による金属錯体ナノシートの電子状態についても検討し、金属的な電子状態や、トポロジカル絶縁体としての特異な量子物性についても研究を展開していることから、当初の計画以上に進展しているとみなせる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の重要な課題として、金属錯体ナノシートにおける量子物性の発現が挙げられる。本研究課題で対象となっているメタラジチオレンナノシートは、有機金属として史上初の2Dトポロジカル絶縁体であることが理論計算から示され、その実験的な証明が強く期待されている。そのため単層のナノシートの角度分解光電子分光スペクトルおよびSTSマッピングによるエッジ状態の観察が求められる。また、この特性はπ共役ヘキサゴナル骨格と金属錯体によるスピン軌道相互作用により発現されることから、配位子と金属の種類を変更は量子物性の制御に有効な手段であると考えている。
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Research Products
(16 results)