2012 Fiscal Year Annual Research Report
湾曲型コラニュレン分子の構造修飾による新規金属錯体の合成と機能創出
Project/Area Number |
12J10461
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 美穂子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 湾曲型芳香族化合物 / 構造修飾 / シクロメタル化錯体 / π-π相互作用 / 自己集合 / 金属配列 |
Research Abstract |
湾曲型芳香族化合物は歪んだ芳香環曲面を有するため、平面芳香族化合物とは異なる性質や機能の発現が期待できる。そこで、本研究では湾曲型コラニュレン分子の構造修飾による新規金属錯体の合成と機能創出を目指している。平成24年度はコラニュレンの構造修飾による配位子および錯体の設計・合成と、得られた錯体の構造検討を行った。 まず、報告例のないシクロメタル化コラニュレン錯体の合成と機能化を目指して、新規配位子2-ピリジルコラニュレン(1)を設計・合成し、NMRおよび単結晶X線構造解析により構造を明らかにした。 次に、配位子1とパラジウムイオンの反応をNMRにより追跡したところ、シクロメタル化パラジウム錯体が二種類の構造異性体(2aおよび2b)の9:1混合物として生成した。2a:2b=9:1溶液の結晶化により、錯体2aは板状および針状結晶の混合物として単離できた。板状結晶のX線構造解析により結晶中の構造を検討したところ、π共役が拡張した2aの錯体構造とπ-π相互作用によるカラム構造が明らかとなった。針状結晶の予備的X線構造からはパッキングの異なる錯体2aの結晶多形が示された。溶液中の構造をNMRにより検討したところ、錯体2aの濃度依存性自己集合挙動が示唆された。錯体2aが結晶中で配位子1とは異なるカラム構造を構築したことから、シクロメタル化により集積構造を制御できたといえる。また、カラム構造ではコラニュレン曲面と平行にパラジウムイオンが配列したことから、配位子1の金属イオン配列の基盤としての可能性も示した。 さらに、配位子1とイリジウムイオンの反応から、ビスおよびトリスシクロメタル化錯体が生成し、イリジウムイオンにより曲面を集積することができた。錯体構造制御は性質を変化させる重要な要素であるため、これらの錯体の今後の性質検討はシクロメタル化コラニュレン錯体の機能化を目指す上で興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、コラニュレンの構造修飾により新規配位子2-ピリジルコラニュレンを合成し、パラジウムイオンとの反応によりシクロメタル化パラジウム錯体を合成した。また、得られた配位子およびパラジウム錯体の構造とパラジウム錯体の会合挙動特性を明らかにした。したがって、研究目的としていた湾曲型コラニュレン分子の構造修飾による新規金属錯体の合成と機能創出のうち、コラニュレンに関する情報検索、配位子と錯体の設計・合成、およびそれらの構造や性質を明らかにすること、などの平成24年度の研究計画はおおむね達成されたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた2-ピリジルコラニュレン配位子やシクロメタル化錯体などの湾曲型コラニュレン化合物を用いて金属イオンの精密配列や多様な構造および性質について検討を行う。特に電気化学・光化学的性質に注目して検討を行う。また、得られた知見を基にコラニュレン骨格モチーフに特有の性質発現や新規機能への応用を試みる。さらに、通常のσおよびπ平面錯体では達成できない曲面金属錯体特有の性質の探索を行うために、コラニュレンおよび構造修飾コラニュレンの多様な金属イオンとの反応による新たなコラニュレン金属錯体の合成と性質検討も引き続き行う。
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Research Products
(3 results)