Research Abstract |
本研究は,水溶性フラーレン誘導体の溶液中にて示す構造を同定するとともに,その会合構造とsiRNAの細胞内導入効率との構造活性相関を明らかにすることを目的としている.また,最終的には,この水溶性フラーレン誘導体を用いてマウスへの組織選択的輸送系の構築を目指している. 私は本年度,1)水中における水溶性フラーレンTPFEとsiRNAとの会合体形成挙動の評価,2)TPFEとsiRNAの会合体による培養細胞へのsiRNA導入効率の評価,3)TPFEとsiRNAの会合体を用いたマウス肺選択的siRNA輸送系の構築の3点の研究を遂行した. まず,会合体形成挙動の評価では,TPFEとsiRNAの会合体の大きさおよびsiRNAの会合体内への取り込みをそれぞれ動的光散乱法および電気泳動法により評価した.混合比および調製法の検討により,siRNAを100%取り込む条件にて,細胞内導入効率が高いとされているサブマイクロメートルサイズの会合体に制御することに成功した.また,in vivo系へ応用する上で必要となる核酸分解酵素による分解からの保護能に関しても評価した.その結果,TPFEと会合体を形成することで,siRNAの分解が著しく抑制されていることを見いだした. 続いて,構築したTPFE-siRNA会合体を用いて,培養細胞への導入効率を評価した.GFP発現細胞に,GFPを標的としたsiRNAを輸送したところ,市販されている導入試薬であるLipofectamine2000よりも高い遺伝子抑制効果を達成した.また,この培養細胞を用いてTPFE-siRNA会合体の細胞毒性に関しても評価したところ,ほとんど毒性がないということを明らかとした. また,TPFE-siRNA会合体を血清と混合するとサブマイクロメートルサイズの会合体が数マイクロメートルの粒子になることを見いだした.この結果から,肺への選択的輸送系への応用が可能であると考え,肺における遺伝子抑制効果を検討した.静脈注射後24時間において,肺における標的遺伝子の抑制効果が顕著に認められた.また,マウスの肺切片からTPFEの肺への蓄積を明らかとした. 最後に,肺への臨床応用を目指し,肺での疾患モデルでの検討を行った.肺における重篤な疾患のひとつである敗血症のモデルを用いて,導入したsiRNAにより肺への好中球の著しい蓄積を抑制することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において,当初の計画では次年度に動物での実験,また,その成果の中から臓器選択的輸送系の開発を検討し行うこととしていた.しかし,現在すでに臓器選択的輸送系の開発に成功し,その上で疾患モデルにおける研究も進めている.以上のことから,当初の計画を遥かに越えて進展している.
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