2012 Fiscal Year Annual Research Report
光による力学的な力を利用したナノ物質マニピュレーションの理論提案
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12J10485
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
工藤 哲弘 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 共鳴光ピンセット / 共鳴光マニピュレーション / 輻射力 / 単一有機分子捕捉 / 非線形光学効果 / Optical tweezers / Optical manipulation / Optical trapping |
Research Abstract |
これまで我々は、非線形光学効果を含めて輻射力の計算を行った結果、従来までの理解と矛盾する共鳴光ピンセットの実験原理を解明し、その効果を上手く活用した新しい光マニピュレーションを提案してきた。24年度ではその研究成果が、高インパクトファクター誌である米国物理学会誌Physical Review Lettersに掲載された。この雑誌は物理の分野で非常に影響力があり、我々の成果を世に公表するためには適確な雑誌である。さらに、非専門家や学生に向けて科学記者が論文の内容を解りやすく説明した読み物である米国物理学会Web誌Physicsにも紹介された。これは毎週数百本の論文の中から一つだけ選ばれるWeb誌であり、同分野の影響力のある専門家のコメントも添えられている。また、新聞報道、国内外の学会発表、顕彰等に多数受賞しており、十分に研究成果を広めることが出来た。 24年度の研究結果としては、上記の理論を更に展開し、従来までは困難であった単分子の長時間捕捉を可能にする手法を理論的に提案した。これが可能になると、タンパク質の結晶化などに利用できると期待される。次に、共鳴光ピンセットの実験のより精緻かつ総合的理解のために動力学的な運動解析を行った。具体的には、共鳴増大する散逸力の影響を調べ、ある状況ではこの効果が分子捕捉に優位に影響している可能性を見出した。さらに、多数の分子の集団から特定の吸収波長を持つ分子のみを選別することができるキラーアプリケーションを提案した。最後に、昨年に共同実験グループから我々が提案している非線形光学効果の影響が光捕捉に現れている報告を受けた。我々の提案を早急に前進させるためには、理論を理解している私自身が実験を行うのが効率的であると考えたため研究先に渡航した。現段階では示唆的な結果であるが捕捉効率が増大している可能性があることがわかった。以上、24年度では理論的、実験的に、その技術の可能性を一歩踏み込んで明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(a)研究成果の公表、(b)従来よりも高効率に分子捕捉する手法や特定分子を選別するキラーアプリケーションの提案、(c)非線形共鳴光ピンセットの実験が行えたので目的は達成出来ていると考えられる。運動解析手法に関しては、示唆的な結果が得られているが課題が依然として存在するため、区分(1)の評価はつけていない。
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Strategy for Future Research Activity |
緊急性の高い実験に着手し、原理解明を行うと同時に非線形共鳴光マニピュレーションの可能性を探求する。理論的な解析も平行して行うためには、光源をパルスレーザーの場合でも利用できる理論に再構築する必要があるのでこれにも着手する。運動シミュレーションに関しては、特に散逸力による吹き寄せ効果に注力し、実験報告されている様々な状況を仮定して、分子が動力学的にどのように光捕捉されるのかを調べる。これらのプロセスを踏み、実験理論双方で、非線形共鳴光マニピュレーションの可能性を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(8 results)