2013 Fiscal Year Annual Research Report
ジピリン錯体のボトムアップ伸張によるフォトニックワイヤの開発
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12J10492
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日下 心平 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ジピリン / フォトニックワイヤ / 蛍光 / 電化分離 / 亜鉛 / インジウム / ビスオキサゾリン / キラリティー |
Research Abstract |
1. ヘテロトリスジピリンインジウム(III)錯体の合成と光物性 ジピリンインジウム錯体は3つのジピリン部位を有することから、フォトニックワイヤ構築にあたって、光エネルギー伝達の分岐部位として機能すると考えられる。今回私は、二つの異なる配位子からなるヘテロトリスジピリンインジウム(III)錯体の合成および光物性の評価を行った。インジウム錯体の蛍光特性は、ヘテロ錯体が対応するホモ錯体よりも高い量子収率を示すなど、亜鉛錯体と同様に、電荷分離が蛍光のクエンチに大きく影響していることが明らかとなった。この結果は、インジウム錯体を光励起エネルギー伝達システムのパーツとして用いるに当たって、適切な分子設計の指針を与えられるという意味で本研究の進行に大きく寄与するものであるといえる。 2. キラルなビスオキサゾリン(BOX)配位子をヘテロモノジピリン亜鉛(II)錯体の開発 本研究では、ジピリンより上流(短波長・高エネルギーの光ドナー部位)となる色素配位子の候補として光学活性部位を有するBOX錯体を提案し、ジピリンとのハイブリッド亜鉛錯体の開発を行った。この錯体はジピリン、BOXどちらの配位子を励起しても同じ量子収率でジピリン部位の蛍光が得られたことから、BOX配位子からジピリン配位子に定量的なエネルギー移動が起こっていると示された。また、CDスペクトルからBOX部位だけでなく、ジピリン部位の吸収に対応するCotton効果が観測された。その効果は弱いものの、BOX配位子のキラリティーにより、ジピリン部位のキラリティーが誘起される結果が得られたと言え、光キラリティーの伝達の可能性を示唆する点で重要でも重要であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までの実験において、フォトニックワイヤを構築するにあたり必要となるジピリン金属錯体の基礎的な性質は全て網羅することができ、かつBOX錯体のような新たな素材を発見することが出来たという点で、順調に研究が進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の結果、ポリスチレン樹脂を担体とする固相合成では、目的のフォトニックワイヤを構築するのは非常に難しいという結論が得られた。これは、ポリスチレン樹脂が溶媒膨潤状態ではフレキシブルであり、サイト間での反応を効果的に抑制することが出来なかったと考えられる。 以降の研究方針としては、ガラス表面のような透明かつ剛直な反応場においてフォトニックワイヤの構築を行い、分光学的方法により、直接フォトニックワイヤの物性を観測するといった対応が考えられる。
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Research Products
(5 results)