2013 Fiscal Year Annual Research Report
1910年代の中独関係:多元的国際環境の下での双方向性
Project/Area Number |
12J10530
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
小池 求 成城大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中独関係 / 辛亥革命 / 第一次世界大戦 / 東アジア国際関係 / 中国外交史 / ドイツ外交史 |
Research Abstract |
本研究は、辛亥革命勃発(1911年)から第一次世界大戦中の中国の対独参戦(1917年)までの中独関係を検討することを課題としている。平成25年度(以下、今年度)の課題は、中独関係を(1)辛亥革命時期については、史料収集および分析を、(2)第一次世界大戦に関しては平成24年度の成果を文章化することにあった。 今年度、2013年9月から2014年2月までドイツのベルリン自由大学歴史文化学部東アジアゼミナール中国学専攻において在外研究を行った。在外研究中、①ベルリンを中心に各地の文書館での史料収集、②コロキアムなどの場でドイツの研究者と議論を行い、それらを通じて、1921年の中独協定締結までを視野に入れて、不平等条約により規定された中独関係の全体像を把握することの必要性を確認することができた。また、史料調査において、在華ドイツ人の利害に直結する通商問題に関心を拡大させることにより、中独関係を政治や通商といった多様な領域の相互関係の中から描き出せるとの着想を得た。 今年度の研究課題であった(1)と(2)の時期の共通性は、中独間での頻繁な意見交換と、対米協調の模索という清末からの連続性である。三国間連携の目的は、中国の主権維持および領土保全であり、特に政治的混乱を利用して在華権益の拡大を図る日本を牽制することであった。辛亥革命時期、日独間で発生したメディア合戦に象徴されるように、ドイツは日本の権益拡大が自国にとって障害となると認識した。日独対立は第一次世界大戦の勃発により、戦争という形に発展した。日独青島戦争の結果、ドイツは膠州湾租借地を失ったが、これはドイツにとって対中外交カードの喪失を意味した。これにより、ドイツは中国の中立維持のために、戦時外交の転換を迫られたと考えられる。 (2)の課題の成果は、池田嘉郎編『第一次世界大戦と帝国の遺産』山川出版社、2014年に収録された「中国の不平等条約改正の試みと第一次世界大戦」である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ドイツでの在外研究により、広範な史料を長期間にわたり集中的に収集することができた。ただし、史料調査に多くの時間を割いた結果、辛亥革命時期のドイツ側の対応やドイツ側史料から見た中国側の対応については考察することができたが、それを中国側の史料とつきあわせて考察する点が、今後の課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに辛亥革命時期および第一次世界大戦期の中独関係について史料調査と考察を行ってきた。また、ドイツでの在外研究により、本研究に必要な史料の大半を収集することができた。今後は、袁世凱の臨時大総統就任以降、中国情勢の安定化が模索される中で、中独関係がどのように展開していったのか、を中国側の史料も利用して、考察していく。同様の課題は、辛亥革命期と第一次世界大戦期に関しても、残されている。随時中国での史料調査を行いながら、これらの課題に取り組み、最終的に対独参戦までにいたる中独関係の展開・特徴を明らかにしたい。成果については学会・研究会などでの研究報告や学術雑誌への論文投稿などにより発表していく予定である。
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