2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J10761
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
二橋 美瑞子 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分散型動原体 / 局在型動原体 / 染色体 / カイコ / ヨトウガ / ショウジョウバエ / Ndc80 |
Research Abstract |
動原体は、細胞分裂の際、複製された染色体を2つの新しい細胞に正確に分配するために重要である。ヒトなど多くの真核生物では、動原体は染色体の一か所に局在しているが、カイコなど鱗翅目昆虫では、複数の動原体が染色体中に散在して存在する「分散型の動原体」の様式となっている。分散型動原体を持つ染色体は、放射線等により切断されても、世代を超えてその断片が保持可能になるなど興味深い性質を持つが、局在型動原体に比べ、その仕組みについては不明な点が多い。本研究課題では、分散型動原体を持つカイコと、局在型動原体を持つキイロショウジョウバエの動原体の比較解析により、分散型動原体の構造及びその進化の解明を目指す。局在型動原体の主要な構成タンパク質の中には、カイコゲノムで見つからないものも存在するため、カイコでは新規な動原体タンパク質も期待できる。 最初に、分散型動原体を持つ昆虫の培養細胞として、カイコ由来の培養細胞BmN4と、ヨトウガ由来で細胞分裂速度がより速い培養細胞Sf9を入手し、安定的な培養システムを確立した。これらの細胞で、分散型動原体の解析を行うため、(1)カイコで判明している数少ない動原体遺伝子のうちNdc80遺伝子をサブクローニングし、EGFP融合型遺伝子を作製し、BmN4細胞とSf9細胞で発現を確認することに成功した。これによりNdc80タンパク質と相互作用する、動原体タンパク質を精製するための道筋が開けた。さらに、(2)Cdc27遺伝子をRNAi法で抑制できると、細胞分裂を中期で停止させることができ、動原体遺伝子の局在の観察に便利であるため、カイコCdc27をサブクローニングするとともに、ヨトウガからもCdc27のクローニングすることに成功した。 局在型動原体を持つ昆虫の代表としては、ショウジョウバエの培養細胞を用いて解析する計画であるため、ショウジョウバエの動原体遺伝子Mis12とNdc80のプラスミドを入手した。今年度の成果、入手した材料を基にショウジョウバエ(局在型動原体)とカイコ・ヨトウガ(分散型動原体)における動原体遺伝子の挙動について解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りカイコNdc80の局在解析を行えた。試薬入手に時間がかかったため、また、出産・育児のため4か月中断があったため、いくつかの実験の実施については次年度以降になるが、細胞周期を止めるRNAi実験に役立つカイコとヨトウガのCdc27遺伝子のクローニングを追加で行った。
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Strategy for Future Research Activity |
カイコのNdc80の局在解析・相互作用タンパク質の解析を中心に、カイコの分散型動原体の挙動と構成要素の解明を進める。さらに、Mis12-Ndc80遺伝子のショウジョウバエ・カイコにおける比較解析により、分散型動原体の進化過程を探る。タンパク質側の解析を精力的に進めるため、動原体が結合するDNA側の配列の解析の優先順位は下げる。
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Research Products
(3 results)