2013 Fiscal Year Annual Research Report
カイコ体液因子Promoting Proteinによる脂肪細胞分化誘導機構の解明
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12J10784
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安達 健朗 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Promotin Protein / 脂肪蓄積 / 3T3-L1 / コレステロール結合 / NPC2 |
Research Abstract |
本年度実施された研究はi)動物個体におけるPromoting Proteinの脂肪蓄積に対する寄与の解明、およびii)Promoting Proteinの下流で起こる細胞内シグナル伝達機構の解析である。 1. 本年度は動物個体の脂肪蓄積におけるPromoting Proteinの寄与を明らかにするため、カイコ幼虫を用いた解析を行った。カイコ幼虫に対してリコンビナントPromoting Proteinを注射したところ、カイコの脂肪組織である脂肪体における脂肪蓄積量が増大した。抗Promoting Protein抗血清をカイコ幼虫に対して注射したところ、脂肪体における脂肪蓄積量が減少した。したがってPromoting Proteinはカイコ個体に対しても脂肪蓄積を誘導する事が示唆された。次に、異なる発生段階におけるPromoting Proteinの発現を解析した。まず、様々な組織におけるPromoting Protein mRNA量を調べたところ脂肪体選択的にPromotingProteinの発現が確認され、最終齢幼虫の後期において高い発現が認められた。カイコ幼虫は最終齢幼虫の後期において多量の脂肪を蓄積することが知られており、本研究で得られた結果と良く一致する。 2. 本年度は、細胞増殖抑制と脂肪蓄積促進を同時に制御するリン酸化酵素に着目しPromoting Proteinの下流で生じるシグナル伝達の解明を試みた。その結果、Promoting Protein添加後の培養細ではAMP-activatedprotein kinase (AMPK)の活性化型リン酸化が元進していることを見出した。AMPKの阻害剤として広く用いられているCompound Cを添加することによりPromoting Protein依存的な脂肪蓄積の促進がキャンセルされた。これらの結果は、Promoting ProteinはAMPKの活性化を介して脂肪蓄積を促進することを示唆している。Promoting Proteinは真核生物において高度に保存されているリソソーム局在性タンパク質Niemann・Pick disease type C2 (NPC2)のカイコにおけるホモログであり、本研究成果はNPC2タンパク質が体液性因子として細胞内のシグナル伝達に影響を与えるという新しい局面を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題であるカイコ体液性因子Promoting Proteinによる脂肪細胞分化ならびに脂肪蓄積の促進について、i)その細胞内シグナル伝達機構を担うキナーゼとしてAMPKの関与を示し、ii)カイコ個体の脂肪蓄積における内因性Promoting Proteinの寄与を立証したことから研究は当初の計画通り順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
Promoting ProteinがAMPKを活性化させる分子機構の解明を行っている。Promoting Protienに対する相互作用タンパク質の探索系を構築しており、この相互作用に着目してAMPKの活性化に至る機構の解明を試みている。現在候補タンパク質をクローニングし、遺伝学的な形質を培養細胞系を用いて解析中である。また、Promoting Proteinが細胞増殖に対して抑制的に働くことの応用としてがん細胞の増殖を抑制するか否かを検討する。
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