2012 Fiscal Year Annual Research Report
固有ジョセフソンフォトニックデバイスの数値的研究:新奇テラヘルツ帯デバイスの提案
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12J10788
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
浅井 栄大 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 固有接合 / テラヘルツ波 / フォトニック結晶 / ジョセフソン効果 |
Research Abstract |
本研究課題の目的である固有ジョセフソンフォトニックデバイスのシミュレーションに向けて、本年度は単一の固有接合の示すテラヘルツ(THz)波放射特性について詳細に調べた。 1)メサ構造内部の温度分布とTHz波放射強度の関係 近年メサ型固有接合において、自己発熱に起因する不均一な温度分布の出現が報告されている。しかし、その温度分布がTHz波放射に与える影響については十分に理解されていない。そこで申請者はメサ内部の位相ダイナミクスを記述するSine-Gordon方程式と熱伝導方程式を同時に解く事により、温度分布とTHz波放射強度の関係を詳細に調べた。計算の結果、メサ内部に存在する大きな温度の不均一性がJosephsonプラズマを強く励起し、THz波放射強度を高めている事がわかった。 2)様々な形状のメサ型試料からのTHz波放射特性 近年様々な形状のメサ型固有接合からのTHz波放射が報告されている。申請者は筑波大学の実験グループ(門脇研究室)と共同研究を行い、実験に用いられているメサ型試料(正三角形、二等辺三角形、正五角形等)からのTHz波放射のシミュレーションを行った。計算結果は実験で観測されたTHz波放射特性を良く再現しており、本計算により様々なメサ型試料内部に発生する電磁場モードとTHz波放射の関係が明らかになった。 3)パッチアンテナと結合した固有接合の示すTHz波放射特性 これまで盛んに研究が進められているメサ型固有接合を用いたTHz波放射デバイスは、放射効率が著しく低い(0.01~0.1%)という問題点を抱えている。そこで申請者はこの問題を解決する新たなデバイス構造として、パッチアンテナと結合した固有接合デバイスを提案し、そのTHz波放射特性を数値的に調べた。計算の結果、新たなデバイス構造はサブmWの高出力なTHz波を放射し、また20%を超える高い放射効率を持ちうる事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標としていた、単一の固有ジョセフソン接合の示すTHz波特性の解析、及び複数の固有接合を取り扱う計算プログラムの作成、はほぼ達成する事ができた。受け入れ研究者である川畑主任研究員や筑波大学の門脇グループとの議論を行いながら、順調に研究活動を進める事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は複数の固有接合が示すTHz波応答特性について詳細に調べて行く。特に、固有接合の示す巨視的量子特性によって引き起こされる特異な電磁波応答特性を調べる。しかし、申請者はこれまで主に古典電磁気学的な電磁波応答の研究を行っており、現状では微視的理論を用いた量子特性の議論は不慣れである。そこで本年度は英国のLoughborough大学へ短期滞在し、超伝導接合系の微視的理論に関して世界最先端の研究を行っているAlexandre_Zagoskin博士と共同研究を行う予定である。
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Research Products
(10 results)