2013 Fiscal Year Annual Research Report
シグナル伝達の場としてのサブオルガネラ脂質ドメインの可視化と機能的意義の解明
Project/Area Number |
12J10940
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高鳥 翔 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 急速凍結 / 凍結割断レプリカ標識法 / 脂質ドメイン / 脂質ラフト / ホスホイノシチド / シグナル伝達 / 細胞内オルガネラ / 出芽酵母 |
Research Abstract |
膜脂質の分布は均一ではなく、あるものは集合を形成し、そこに親和性を持つ種々の膜分子を動員することによって機能的ドメインを生ずるというコンセプトが受け入れられつつある。しかし膜脂質の局在解析法には不備があるため、個々の脂質局在はほとんど明らかでなく、特にサブオルガネラレベルで膜ドメインの存在を実証した例は乏しい。そこで本研究課題では、生理的分布を維持したまま膜脂質を物理的に固定・標識できる手法である「急速凍結・凍結割断レプリカ標識法」の有用性に着目し、これを応用して脂質ドメインの可視化と機能的意義の解明を目指した。 昨年度に引き続き、エンドソーム上の脂質分布を可視化するためにホスファチジルイノシトール(3,5)二リン酸(PI(3,5)P2)の特異的標識法の検討を進めた。出芽酵母ATG18タンパク質をプローブとして用いることによりPI(3,5)P2の標識が可能になったが、一方でこのタンパク質はPI3Pに対しても交差反応性を示すことが明らかになった。しかし、PI3Pに特異的に結合するp40由来PXドメインタンパク質を反応系に過剰量共存させる手法によりPI3Pの標識をほぼ完全に排除することができた。この条件を用いて、PI(3,5)P2を増加させる刺激である高張液処理を施した出芽酵母についてPI(3,5)P2分布を検索したところ、液胞膜における標識を見出した。興味深いことに、高張液処理した液胞膜には膜タンパク質が高度に排除された膜ドメインが形成されており、このドメインにPI(3,5)P2が強く集中していた。 これまでPI(3,5)P2の局在についてはほとんど報告がなく、ナノレベルの解像度を達成したのは本例が初めてである。本研究を通じてPI(3,5)P2がサブオルガネラレベルの膜ドメインを形成するという新しいコンセプトを提唱できるものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PI(3,5)P2がエンドソーム機能に重要であることは従来より指摘されていたが、その詳細な局在は不明であった。本研究を通じてPI(3,5)P2の特異的標識法を確立できたことは大きな進歩であり、またPI(3,5)P2がドメイン状の分布をとるという新知見も得ることができた。これは「膜分子のドメイン状分布を捉え、機能を探る」という本研究の目的とよく合致する結果であり、期待を超えた成果が得られたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、哺乳類細胞においてもPI(3,5)P2の詳細な細胞内分布を解析中である。昨年度に確立したオルガネラマーカーの標識を併用することにより、PI(3,5)P2が局在する細胞内構造を効率的に同定できるものと期待している。さらに脂質ドメインへの局在が報告されているγセクレターゼ等の膜タンパク質を対象に分布を詳細に解析し、膜ドメインとの関連を明らかにしたい。これらの解析を通じてサブオルガネラレベルでの膜ドメインの実証と機能的意義の解明を目指す。
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Research Products
(5 results)