2012 Fiscal Year Annual Research Report
その場顕微赤外分光システム構築と水反応場解析への展開
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12J11009
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
宇部 卓司 東京理科大学, 基礎工学研究科材料工学専攻, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超臨界水 / 赤外分光 / 水 / 氷 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
本研究では、本来赤外線を吸収してしまう水中において、敢えて最も単純でSN比に優れる『透過法』による赤外吸収スペクトルの測定を目指して装置の研究開発を行っている。この研究によって期待される成果は、生体内を始めとした様々な水溶液環境(氷の状態から高温高圧の超臨界状態まで)を本研究で作製したセル内に再現し、その場測定を行うことで、今まで電気的・光学的手法を用いて間接的にしか測定できなかった反応の現場である、結合状態の変化が直接観察できるようになる。例えば、触媒による合成・分解過程や、電池反応の現場を測定するなどの多岐にわたる応用が期待される。 本年度は、顕微機能を有した精密温調光学セルを作製し、氷、水、水蒸気、そして高温高圧の超臨界水といった大きく物性の異なる水の状態を測定する事で、水素結合が高温になるにつれどのように崩壊するのか、そして未だ測定されていない高精度な超臨界水の赤外吸収スペクトルを明らかにした。また、スペクトルのカーブフィッティングを行い、吸収要素の解釈には第一原理分子軌道計算を用いて、定性的な説明を行うことを試みた。その結果、超臨界水という高温高圧の環境下においても、氷と同じ微視的な構造が残留している可能性が示唆された。また、変角振動は水素結合の束縛が解けることによって振動モードが氷の1つから少なくとも4つに増えることが明らかとなった。 また、水とマグネシウムが水和反応し、水酸化マグネシウムが生成することは広く知られているが、本装置を用いて過冷却水(-5℃)中でのMg膜の水和反応のその場測定を行った。その結果、Mg膜は-5℃の過冷却水中でも反応し、水酸化マグネシウムが生成した。また、乾燥状態の通常の水酸化マグネシウムに比べ、水中では非常に強いMg-O-H伸縮振動の他、水酸化マグネシウム膜に吸着、あるいは内包された水分子の振動を明確に捉えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
氷から超臨界水という水の状態図における幅広い領域の系統的な赤外分光による測定は、過去に例が無く非常に興味深いものである。また、本研究で開発された装置の応用例として水中での反応のその場測定を幾例か行ったが、このことは本研究の計画が着実に進んでいることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の計画上における定量測定の要となる厳密な光路長の規定のためにMEMS加工を行ったSi製スペーサーの試作を試みたが、現段階の加工精度の関係から現行のNi箔製スペーサーを代替する事は出来なかった。次年度においてはセルの光学窓であるダイヤモンド板に水の流路を直接製形成することで、定量性の向上及び測定の簡便化を目指し、装置の実用化を目指す予定である。
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Research Products
(4 results)