2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒラメ・カレイ類の体色の左右差形成と体色異常の発生メカニズムの分子生物学的研究
Project/Area Number |
12J11203
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
烏 暁明 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 発生ステージング / in situハイブリダイゼーション / double anal fin / 次世代シーケンス / アッセンブル / レチノイン酸 |
Research Abstract |
ヒラメ仔魚のステージングでは、研究室内でのヒラメ仔魚の飼育システムを構築し、ヒラメ変態の発生ステージを詳細に写真撮影するとともに軟骨と硬骨の骨格の発生段階を観察し、色素分化マーカーと幾つかの組織分化マーカー遺伝子の発現をin situハイブリダイゼーション法(ISH)で解析した。特に、非対称性形成と関係する眼の位置、頭部の非対称性、色素の形成、既存の仔魚型色素胞と新しく分化する成体型色素胞との位置的関係を組織学的に調べた。 そして、ヒラメの発生ステージングをさらに充実できると考え、ステージングの再構成を進めている状況を水産学会で発表した。 体色の左右差では、メダカdouble anal fin(背鰭と背中側の体色が腹側化する突然変異体)の原因遺伝子zic1が背と腹の形質の差を制御していることが報告されている。本研究では、トラフグで背中側皮膚と筋肉で発現し、ヒラメ変態期の左右皮膚での発現量の差が確認された。さらにISH法で解析した結果、H期仔魚において有眼側皮膚組織でzic1の発現が観察された。また同時期に、無眼側皮膚の表皮がアセチル化チューブリン抗体に陽性となることが観察された。このような左右差は両者ともにG期には検出されず、1期には一部個体のみで検出された。この結果を水産学会で発表した。 それとともに、変態後期のヒラメ仔魚の左右組織からRNA抽出し、理研オミックス基盤領域の支援のもと、Illumina社の次世代シーケンサーHiseq2000により、100bpペアエンドのRNAseq解析を行って、現在、次世代シーケンス解析スフトウェアCLC Genomics Workbenchを用いて、アッセンブルと解析を進めている。 体色異常の発生機序を解明するための実験では、これまでの報告により、レチノイン酸とのインキュベートは高頻度で色素異常を発症することが分かっているので、レチノイン酸の色素形成に及ぼす影響を解析する途中で、レチノイン酸により脊椎骨異常の誘導メカニズムについても解析して、結果を水産学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
メダカでzic1遺伝子が体の背側に発現し、体色の背腹の違いを制御しているという最近の報告に着目して、ヒラメでは変態期にzic1遺伝子が有眼側に一過的に発現することを発見するなど、目的に向かって着実に成果をあげているものと考えている。またレチノイン酸の色素形成に対する影響を解析する中で、レチノイン酸による骨格異常の誘導メカニズムについても解析するなど副次的な成果をあげている.意欲的に研究を進んでいると思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
zic1のほかに転写因子tbx15とagoutiは体色パターン形成の上流にあると考えられ、左右の皮膚での発現の差異を検討するために、リアルタイムPCRおよびISH法で解析を行っている。さらにCMVプロモーターに連結した強制発現ベクターを準備し、強制発現ベクターを仔魚の左右体表直下に顕微注入することにより、候補遺伝子を筋肉と真皮で強制発現して、着底後に色素および皮膚形成への影響を調べている。得られた成果を順次取りまとめ、国際誌に投稿する予定。
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Research Products
(5 results)