2012 Fiscal Year Annual Research Report
スピン起電力を中心とするスピントロニクスの理論的研究
Project/Area Number |
12J11208
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山根 結太 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | スピントロニクス / スピン起電力 / スピン流 / 磁壁 |
Research Abstract |
私、山根結太特別研究員(以下研究員)は本年度、スピントロニクス、特にスピン起電力と呼ばれる現象に対する理論研究を行った。スピン起電力は強磁性体中の局所磁化ダイナミクスによって伝導電子の運動が誘起され、それにより起電力が生じる現象である。スピン起電力の研究により、電子と局所磁化ダイナミクスの相互作用の解明が期待されている。 スピントロニクスにおいて特に重要な局所磁化ダイナミクスは磁壁移動である。磁壁は磁性体に普遍的な構造であり、電流や磁場による駆動が容易であることから局所磁化ダイナミクスを調べる格好の舞台であるとともに、デバイス応用上においでも欠かせない技術を提供する。特に、パーマロイと呼ばれる鉄とニッケルの合金はその極端な軟磁性から応用上非常に重要な物質である。パーマロイ中では渦型磁壁と呼ばれる形状の磁壁が形成され、印加磁場が100mT程度以上になると非常に複雑な変形を繰り返しながら細線中を移動する。その複雑なダイナミクスを少数のパラメーターでモデル化することは難しく、従来の理論では十分な定量的理解が得られていない。 研究員は過去にスピン起電力の表式を与える基礎理論を構築している。本理論に基づき、パーマロイ細線において、磁壁を磁場で駆動する際に生じるスピン起電力を数値的に計算した。そして得られたスピン起電力を詳細に解析することにより、パーマロイ中で磁壁が移動する際の磁気コアの生成・消滅過程に伴って、スピン起電力シグナルに瞬間的に大きなピークが現れることを明らかにした。すなわち、研究員のスピン起電力理論に基づいた研究によって、パーマロイ中の複雑な磁壁移動の新たな知見が得られ、その精確な検出方法が与えられた。また、磁気異方性の強い物質においてはそうしたピークは現れないことも明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
パーマロイのみでなく、磁気異方性の強い物質におけるスピン起電力を調べ、物質依存性にまで踏み込んだ成果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究でスピン起電力理論を用いてパーマロイ中の磁壁ダイナミクスの解析を行った。そして、パーマロイ中の磁壁移動に伴って起きる磁気コアの生成・消滅のタイミングを、スピン起電力のピークの位置から精確に知ることができることを明らかにした。しかし、磁壁ダイナミクスの詳細は物資や試料の形状により様々であり、複雑な磁壁構造に対しては従来の理論ではいまだ十分な理解が得られていないものも多い。今後、スピン起電力理論を用いて更に複雑な磁壁のダイナミクス(例えばバブル型磁壁など)を明らかにすることを目指す。
|
Research Products
(6 results)