Research Abstract |
視覚系,体性感覚系,前庭迷路覚系からの求心性情報は,歩行などの動的姿勢制御に重要な役割を果たすことが報告されている.このことから,足底の体性感覚系の誤差学習に焦点を当てた足底知覚学習トレーニングは,歩行時の姿勢バランスに効果的に作用する可能性がある.そこで本研究は,足底知覚学習トレーニングが高齢者の歩行時の姿勢バランスに及ぼす効果について明らかにすることを目的とする. 本年度は,足底知覚学習トレーニングが高齢者の歩行時の姿勢バランスの安定化に与える効果についてランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial)にて検証を行った.対象は,デイサービスおよびデイケアを利用している高齢者とし,介入群とコントロール群にランダム割付けした.介入群には,硬度の異なる5段階のスポンジを足底で弁別する知覚学習課題を実施した.コントロール群には,コントロール課題として硬度の弁別は求めずに介入群と同様の課題を同回数実施した.これらの課題は計10日間実施し,介入前後における歩行中の体幹加速度と歩行速度を測定した.歩行中の体幹加速度は,無線型3軸加速度計を用いて測定した.加速度計の装着部位は,第3腰椎棘突起部とした.加速度計より得られたデータから側方・垂直・前後成分のRoot Mean Square(RMS)を算出した.結果,介入群における足底知覚学習課題の誤答数は,介入日数が進むにつれて有意に減少した.また,二要因分散分析の結果,側方・垂直・前後成分のRMSは,群の要因と介入前後の要因で有意な交互作用を認めた.一方,歩行速度では,有意な交互作用を認めなかった.本研究結果より,足底知覚学習トレーニングは,高齢者の歩行時の姿勢バランスの安定化に効果的であることが明らかにされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,足底知覚学習トレーニングが高齢者の歩行時の姿勢バランスに及ぼす効果について明らかにすることである.本年度は,高齢者を対象としたランダム化比較試験にて,その効果の検証を行った.以上のことから,本年度の達成度は「おおむね順調に進展している」に該当すると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,足底知覚学習トレーニングが高齢者の歩行時の姿勢バランスに及ぼす効果について,ランダム化比較試験を用いて明らかにした.しかしながら,ランダム化比較試験は,実施した介入の順序効果および時期効果については明らかにすることができない.そのため,今度はクロスオーバー比較試験を用いて足底知覚学習トレーニングが高齢者の歩行時の姿勢バランスに及ぼす効果についてを検証していく必要がある.
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