2013 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞因子が制御するストレス応答による老化制御機構
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12J40105
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仁田 英里子 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 造血幹細胞 / 老化 / アポトーシス / ストレス / TERT / p53 / ASPP1 / 白血病 |
Research Abstract |
我々はこれまでの研究結果により、TERTがテロメア長非依存的に造血幹細胞を維持する分子機構を明らかにしてきたが、さらに異なる機構でTERTが造血幹細胞を維持する可能性を探るためTERTの結合因子に注目し、核小体因子nucleosteminが造血幹細胞のDNA損傷修復に貢献して造血幹細胞を維持することを明らかにし論文として発表した。これはTERTがテロメア領域のみならず核小体の恒常性維持を介して造血幹細胞を制御する可能性を示唆しており興味深い。また近年、上皮幹細胞においてTERTがBRG1と結合しWnt標的遺伝子の発現を維持することが幹細胞制御に重要であることが報告された(Park et al. Nature 2009)。クロマチンリモデリング因子として知られるBRG1は、転写の基本単位ヌクレオソームに結合し能動的にクロマチンを再構築することで、標的遺伝子に対する転写関連タンパク質のアクセスを容易にし、その転写発現を制御する重要な分子である。造血幹細胞におけるクロマチンリモデリング因子の重要性を検証するためBRG1およびその相同分子BRMの発現レベルを調べたところ、BRG1は前駆細胞や分化した細胞の一部にも発現する一方で、BRMは長期再構築能を持つ未分化な造血幹細胞に特異的に発現し分化した細胞では発現が低下していた。このことから我々はBRMが造血幹細胞の制御に関与するかを検証するためBRMノックアウトマウスの造血細胞を解析したところ、競合的造血幹細胞移植においてBRM欠損造血幹細胞は特異的に失われ、BRMが造血幹細胞の長期再構築能維持に必須であることが示された。このときBRM欠損造血幹細胞では細胞周期が活性化しており、BRMは造血幹細胞の静止期維持に貢献することが示唆された。これらの性質は何れも造血幹細胞特異的に見られ、BRMの機能が造血幹細胞に特異的なものであることが伺える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ研究計画通りの進展を得られていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果によりBRMが造血幹細胞の維持に重要であることが明らかになった。幹細胞は分化の多能性を維持するため、細胞内外のシグナルに対応してあらゆる方向の細胞運命の決定・細胞分化を速やかに開始し得る可逆的な発現抑制状態を維持しているが、標的遺伝子に対するBRMによるクロマチン再構築と転写因子複合体のリクルートは造血幹細胞に於いてこの様な状態を維持する為に有利である。今後モデルマウスを用いて、BRMを中心とする複合体によりダイナミックに制御される造血幹細胞の転写制御仮説を立て、これを証明する。
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