2013 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体のマトリックス振動分光における特異的希ガス効果の理論的解明
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12J40130
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野 ゆり子 北海道大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 希ガス化合物 / フェルミ共鳴 / ab initio / PtCO / BeO / 希ガスマトリックス |
Research Abstract |
1年目にDFT計算より得られた知見をもとに、高精度ab initio法によるポテンシャル曲面の作成を試みた。Ar-PtCOは平衡状態近傍では単参照の扱いが可能であったが、原子間距離が伸びた位置での電子状態は多配置性が強まり、単参照の範囲では計算が破綻する傾向が見られたため、コストの数倍高い多参照理論に基づくアプローチが必要になった。電子状態計算はcaspt2を用い、ポテンシャルの作成を行っており、現在も続行中である。同時に既に得られている低レベル計算のポテンシャル関数を4次の多項式にフィットし、その展開係数から非調和効果を考慮した振動回転準位を求め、振動CI計算により得られるCI係数から、各振動状態における振動波動関数の混合状態の解析を試みた。Ar-PtCO, Ar-PdCOについては、予想通り変角振動の倍音と伸縮振動との間にフェルミ共鳴が起こることが明らかとなった。変角振動数の基音の強度はフェルミ共鳴により弱まり、倍音に相当する振動数の強度が強められる。また変角振動数の実測値が報告されているため当該現象が起こらないと予測されていたAr-Nicoについてもフェルミ共鳴が確認された。Ar-NiCOでは変角振動数の基音の強度が大きいため、フェルミ共鳴により基音が弱まっても実験で観測可能であったと考えられる。本研究における希ガスが錯体に結合することによる振動数シフトに加え、錯体周囲のマトリックス環境の影響も検討するため、周囲の希ガス原子を古典的に扱う量子古典混合ハミルトニアンを定義し、モンテカルロシミュレーションを行うことにより、XeまたはArマトリックス中での希ガス錯体(Ng-BeO)形成と周囲のマトリックス環境が振動数に与える影響を定量的に見積もった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては高精度ab inito計算によるポテンシャル作成を試みた。電子状態計算に予想外に時間がかかり、現在のところ最終結果はまだ出ていないが最終年度前半には終わる予定である。また研究開始時にははNi, Pd, Ptの系列の中で、希ガス効果による振動数シフトでNiCOのみが例外的な性質を持つと予測していたが、実際にはPdCO, PtCOと同様な性質を持ち、系統的に説明可能であることが示されるという成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては高精度ab initio法を用いたポテンシャルを完成させ、そのポテンシャル上で振動解析を試みる。また学会等における発表も積極的に行う。
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Research Products
(6 results)