2012 Fiscal Year Annual Research Report
太陽フレア現象における粒子加速機構とプラズマダイナミクスに関する観測的研究
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12J40170
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
渡邉 恭子 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 太陽フレア / データベース / 粒子加速 |
Research Abstract |
まず本年度は、研究目的を達成するために必要不可欠なツールである、太陽フレアの多波長観測データのデータベースを作成し、それを定常運用できる耐性を構築した。まず、ひので衛星で観測された太陽フレアの情報については「ひのでフレアカタログ」としてまとめ(Watanabe et al., 2012)、現在Web上に公開している。そこにRHESSI衛星で観測された硬X線の情報と、野辺山電波ヘリオグラフにおける観測情報を付け加えることにより、太陽フレア現象中における粒子加速機構の研究を行うために必要な情報を一挙に取得できるデータベースとした。また太陽は現在、太陽活動極大期中であるため、本年中も数多くの太陽フレアが発生した。これらの太陽フレアの情報を月に一回まとめて更新する体制を作り上げることにより、本データベースは現在も定常的に運用できている。 次に、作成したデータベースをもとに、太陽フレア現象のうち粒子加速機構に関する情報について解析を進めている。特に「ひので」で観測されている白色光フレア現象に着目して解析を進めており、「ひのでフレアカタログ」により、「ひので」可視光・磁場望遠鏡(SOT)で観測された白色光フレアイベントは25例以上にのぼることが確認された。このうち大規模(X-class)フレアでは観測されていたほとんど全てのフレアが白色光フレアであり、また比較的小規模(C-class)のフレアでも白色光の増光が見られたイベントが数例確認された。 これまでの研究により、白色光フレア現象は硬X線放射と放射時刻・位置とも相関が良いことから白色光放射の起源は非熱的電子であると言われている。最近の「ひので」/SOTの観測においても、この説を支持する結果が出ている(Watanabe et al., 2010 ; Krucker et al. 2011)。しかし、理論的には白色光は光球面で、硬X線(50-100keV程度)は彩層下部で放射するため、放射高度に違いがある。「ひので」/SOTは2012年1月27日に発生したX-classのリムフレアを観測していた。このイベントにおいては、赤・緑・青の3色の可視連続光で観測された白色光の増光(カーネル部分)が、それぞれ少々異なる位置で観測されていた。これは、色による高さ方向の位置の違い(放射高度の違い)によるものと考えられ、またこれらの放射の位置関係から、この「ひので」の観測においては、白色光は光球面あたりで放射していることが確認されたこの研究内容については多くの国際学会で発表し、現在論文にまとめている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に必要不可欠な太陽フレア多波長データベースはほぼ構築でき、定常運用できている。今後、グループ内外からのデータベースに対するリクエストにも応えてゆく予定にしている。観測データの統計解析に繋がるイベントスタディは現在すでにいくつかのイベントに対して進めており、使用データも粒子加速起源のデータである硬X線や電波、そして白色光に限らず「ひので」やSOTで観測された紫外線データや磁場のデータも用いることにより、太陽フレア現象全体をより理解するためのデータ解析を進めている。今後、解析データ数を増やすことにより、統計研究に繋げてゆく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は太陽フレア多波長データベースを定常的に運用してゆくとともに、観測された太陽フレア現象について、数多くのイベントに対して詳細な解析を行ってゆく予定である。統計的な解析を行ってゆく予定である。この統計解析の結果をもとに、観測データから太陽フレア現象中における粒子加速モデルの構築を目指す。また、今まで粒子加速の情報として使われてこなかった紫外線データをもちいることにより、加速域付近における加速粒子の情報を取得したいと考えている。 次に、上記で得られたモデルを用いて、太陽フレア現象中におけるイオンと電子の振る舞いをシミュレートするシミュレーションコードの作成に取りかかりたいと考えている。イベントごとに特徴的なパラメータを代入することによって観測結果を再現できるシミュレーションを行うことにより、電子加速成分・イオン加速成分共に太陽フレアで観測される結果を説明できる現実的なモデルを構築する予定である。
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