2013 Fiscal Year Annual Research Report
太陽フレア現象における粒子加速機構とプラズマダイナミクスに関する観測的研究
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12J40170
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
渡邉 恭子 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 太陽フレア / データベース / 粒子加速 |
Research Abstract |
まず、太陽フレアの多波長観測データのデータベース「ひのでフレアカタログ」については、新しく発生した太陽フレアの情報を毎月更新しており、定常運用を行っている。また、要望のあったフレア動画と磁場データの掲載についても検討を行っている。 次に、上記の作成したデータベースをもとに、太陽フレア現象の統計的な解析を行った。特に太陽フレア中における粒子加速の結果発生する白色光フレア現象について、どの物理量が白色光の増光に寄与しているのかを探るため、ひので/SOTが観測した白色光フレアと非白色光フレアについて、統計的な解析を名古屋大学STE研所属の学生(北川潤氏)とともに行った。これまでの解析で、太陽フレアのクラス(軟X線強度)や発生場所、また硬X線スペクトルのベキは関係がないことが分かった。一方、白色光フレアは非白色光フレアに比べてフレアの軟X線放射の継続時間が短く、軟X線ピーク時における温度は比較的高かった。また、硬X線の放射強度も比較的大きいイベントにおいて白色光が見られる傾向があった。コロナ質量放出(CME)との関連や、ひので/SOTで観測された2本のCaリボン間の距離との比較も行ったところ、白色光フレアではCMEを伴わないことが多く、Caリボン間の距離は比較的短いことが分かった。以上の解析結果より、白色光フレアは大量の加速電子が短時間にコンパクトな領域に降り込むことによって発生していると考えられる。 また、軟X線強度ピーク時における温度とエミッションメジャーの関係を比較したところ、白色光イベントは温度に対してエミッションメジャーの値が低い(エミッションメジャーに対して温度が高い)傾向があった。この関係はリコネクションポイントのコロナ磁場強度を反映していると考えられ、白色光イベントはこのコロナ磁場が強い傾向があった。この結果は、白色光フレア発生の1つのパラメータとしてコロナ磁場が関連していることを示唆している。 また、光球面で見られる白色光放射と加速場があるコロナの間を繋ぐ彩層における粒子加速の様相についても、紫外線観測を用いることによって詳細な解析を進めている。こちらについてはまだイベントスタディーであるので、今後、統計解析を行って行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に必要不可欠な太陽フレア多波長データベースは構築でき、定常運用できている。観測データの統計解析も進めており、使用データも粒子加速起源のデータである硬X線や電波、そして白色光に限らず「ひので」やSDOで観測された紫外線データや磁場のデータも用いることにより、太陽フレア現象全体をより理解するためのデータ解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も太陽フレア多波長データベースを定常的に運用してゆく。また、「ひのでフレアカタログ」に対する国内外からの要望にもこたえてゆく。 次に、これまでに行った白色光フレアにおける粒子加速現象に関する統計解析の結果に加えて、粒子加速の彩層における様相や磁場条件などについての統計解析を行うことによって、観測データから太陽フレア現象中における粒子加速モデルの構築を目指す。 最後に、上記で得られたモデルを用いて、太陽フレア現象中におけるイオンと電子の振る舞いをシミュレートするシミュレーションコードの作成に取りかかりたいと考えている。
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