2013 Fiscal Year Annual Research Report
発現プロファイル解析による植物共生菌分泌タンパク質の共生成立における機能の解明
Project/Area Number |
12J40172
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹本 愛子 (田中 愛子) 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 特別研究員(RPD)
|
Keywords | 共生 / 植物病原菌 / 転写制御因子 |
Research Abstract |
1. トランスクリプトーム解析(RNA-seq)の実施 先に, Epichloë festucaeにおいて宿主植物との共生確立に必須であるZn(II)2Cys6タイプの転写制御因子をコードする遺伝子PROAを同定した。また、これまでに他の糸状菌では、PROA相同遺伝子が有性生殖に必須であることが明らかにされている。本研究でね、E. festucaeにおいて、PROAがどのように宿主植物との共生確立に関わっているかを明らかにするため、昨年度、野生株およびproA変異株感染サンプルのRNA-seqを実施した。本年度は、さらに2つの共生関連変異株(noxAおよびsakA)感染サンプルのRNA-seqデータとの比較解析を行った。その結果、132遺伝子がproA変異株においてのみ顕著に発現レベルが低下していることが明らかになった。また、132遺伝子のうち9遺伝子については、noxuAおよびsakA変異株において野生株と比較してむしろ発現レベルが上昇していた。このうち2遺伝子は、糸状菌Podospora anserina.において、有性生殖に関与するidc2およびidc3の相同遺伝子であり、これら9遺伝子が類似した発現パターンを示し、PROAの下流遺伝子の中でも特に重要な遺伝子群であると推定された。そこで、これら9遺伝子の変異株を作成したところ、ひとつの変異株は、proA変異株と同様に宿主植物の矮化・枯死を引き起こした。 2. E. festucaeにおけるPROA下流遺伝子群の細胞内局在性 上記9遺伝子にコードされるタンパク質と緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク発現ベクターを作成し、野生株に導入した。得られた形質転換体を共焦点レーザー顕微鏡により観察したところ、これらのうち4遺伝子にコードされるタンパク質とGFPとの融合タンパク導入株において、良好なGFP蛍光が検出され、細胞膜と液胞、細胞膜、隔壁および液胞、残り2遺伝子については、液胞にGFP蛍光が観察された。また、これらのうち、3遺伝子それぞれとGFP融合タンパク導入株では、菌糸の隔壁付近の膨張が観察された。この表現形質は、/以前に共生確立に必須であることを明らかにしているRacAを恒常的に発現させた株においても観察されており、これら遺伝子群が、同じ経路で機能し、共生確立に関わる遺伝子群である可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子発現パターンを最も信頼性高く解析できるRNA-seq法を用い、昨年度のproA変異株に続いて今年度はnoxAおよびsakA変異株の詳細な解析を行った。その結果、3つの変異株で特徴的な発現パターンを示す9遺伝子に注自し、それぞれの破壊株を宿主植物に接種し、そのうちひとつ共生できない変異株を見出した。また、上記9遺伝子のうち4つのタンパク質産物の局在性をGFP融合法により調べ、それぞれ興味深い知見を得た。本研究は、当初の計画通り順調に進展しており、今後も継続して研究の発展が見こまれる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ProAタンパグ質が、直接結合するプロモーター配列の回収(ChIP)には、すでに成功している。ラージスケールでのChIP実験によって、配列解析(ChIP-seq)に必要なDNA量を得る予定である。配列解析で得られたデータをRNA-seqのデータと合わせて解析することで、ProAタンパク質に制御される遺伝子群を特定し、proAの共生確立における機能を明らかにしたい。
|
Research Products
(3 results)