2012 Fiscal Year Annual Research Report
生態的形質と発生機構の共進化と多様化についての理論的解析
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12J40187
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
伊藤 洋 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 進化的分岐条件 / 多次元形質空間 / 剛体シミュレーション / 適応進化 / 群集進化 / 適応放散 / 種分化 / 並列処理 |
Research Abstract |
研究計画の通り、昨年度は主に解析(1)、解析(3)を行った。それらの実施状況は以下の通りである。 まず解析(1)については、本研究よりも以前に申請者が構築したシステムにより、仮想的な節足動物の3次元形態が遺伝子型に基づく個体発生プロセスにより形成され、それらの個体が相互作用し進化する動態は既に実現されているが、システム全体が1つのCPUコアのみを使用する仕様になっているため、計算速度を改善する余地があった。そこで、一度に複数のCPUコアを効果的に活用できるようにシステムを改良し、パソコンの複数のCPUコアを同時に使用することができるようにした。また、6つのCPUコアを持つデスクトップパソコンを2台購入し、これらに並列処理ツール(GNU parallel)を導入することにより、合計12個のCPUコアをあたかも1台のパソコンの12個のCPUであるかのように使用できるシステムを構築した。 次に解析(3)については、多次元形質空間において共進化する集団の進化的分岐条件、及び複数レベル選択(系統内選択と系統間選択)の効果的な記述式についての研究を以下のように遂行した。進化的分岐条件については、形質空間の中を進化動態により移動する集団が進化的分岐領域に侵入すると、無性生殖集団の場合は直ちに進化的分岐が生じることを数値的に示した。これを進化の決定論的記述子の1つであるcanonicalequationと組み合わせることにより、適応放散の決定論的な動態を速やかに計算することができるようになった。複数レベル選択については、本研究はPrice方程式の枠組みを利用し、系統樹の樹形と複数レベル選択の効果の関係を示す方程式を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析(3)は当初の計画以上に進展している。解析(1)の進展はやや遅れているが、システムの主要部分の構築は終了しているので、遅れは2,3か月程度である。従って全体としては、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では特に問題はない。当初の計画通りのやり方で研究を遂行する予定である。解析(3)の数学的解析手法の特徴や適用条件などに依存して、解析(1)や解析(2)の進化シミュレーションをどのようなものにすべきかや、その結果をどのような統計量として計算すべきかが決まる。従って、シミュレーションを実行するシステムの構築作業に対して少し先行する形で数学的解析手法を開発するという計画はやはり妥当である。今年度はシミュレーションのシステムを完成させ、様々な形態の仮想的節足動物が適応放散する様子を計算し、解析することができると期待している。
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