2001 Fiscal Year Annual Research Report
ラテン文学におけるギリシア神話の受容と継承一叙述技法から見た研究
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13018224
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 宏幸 京都大学, 文学研究科, 助教授 (30188049)
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Keywords | ギリシア神話 / ラテン文学 / 叙述技法 / 叙事詩 / ウェルギリウス / オウィディウス / 『アエネーイス』 / 『変身物語』 |
Research Abstract |
本研究はギリシア神話の特質を口承伝統や民族的基盤を離れて創造的活力を保持した点に認める視点から、ギリシアからローマ,さらに後世の西欧文明へと,異文化間の伝承の大きな継ぎ目をなしたラテン文学に着目し,そこでの神話を題材とした叙述技法を観察・検討することを通して,ギリシア神話の伝承について本質的様態に考究することを目的として掲げた.具体的な観察対象として,本年度はとくに,技法面ではカタロゴス(katalogos, catalogue)と遅延(retardation)に焦点を当て,作品としてはウェルギリウス『アエネーイス』とオウィディウス『変身物語』を重点的に取り上げた. 主要な研究成果としては,古典テキストの再検討という基礎的作業の一部として,(1)ウェルギリウス『アエネーイス』の原典訳および解説(裏面,図書の項参照)を公刊する一方,個別的論考として,(2)『アエネーイス』における「苦難」を扱った論文,および,(3)オウィディウス『変身物語』第2巻に語られるパエトンの物語に関する論文を発表(裏面参照)した.(3)の論文では,オウィディウスが,叙事詩の技法であるカタロゴスや遅延を叙事詩本来の用法とは異なる形で取り込むことにより,そこに生じる形式と内容の不整合を作品全体の提示に生かしていることを観察した.また,(2)の論文は作品に描かれる「苦難」がとりわけ後半部で「神話的過去」と「歴史的未来」との関わりにおいてどのように提示され,どのような表現を与えられているか考察したものであったが,この「苦難」については,これと密接に関連する「非情」というモチーフに着目して,さらに考察を進め,本年6月に学会発表(日本西洋古典学会第53回大会)を予定している.
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[Publications] 高橋宏幸: "ウェルギリウス『アエネーイス』後半における苦難の終わりと始まり"文部科学省科学研究費補助金特定領域研究(A)118「古典学の再構築」(平成10年度〜平成14年度)第I期公募研究論文集. 315-336 (2001)
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[Publications] 高橋宏幸: "パエトンの暴走とオウィディウス『変身物語』の構想"京都大学文学部研究紀要. 41. 1-42 (2002)
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[Publications] 岡道男, 高橋宏幸: "ウェルギリウス アエネーイス"京都大学学術出版会. 681 (2001)