2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13021205
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 忠 東北大学, 名誉教授 (60004058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺山 恭輔 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教授 (00284563)
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Keywords | 蘭学 / 科学書 / 砲術 |
Research Abstract |
1)本年度は砲術書の出版状況の数量的調査を主として行った。データを262点に絞込み、その継時的変化の分析を試みた。得られたデータを50年ごとに集計してみると、17世紀前半37点、同後半19点、18世紀前半10点、同後半20点、19世紀前半84点、後半92点となる。 2)17世紀前半が比較的多いのは、戦国時代の遺風もあり、幕藩体制も堅固とはいえず、島原の乱もあってまだ軍備の増強、武器への関心が強かったためである。19世紀になると急勾配で上昇する。無論これはロシアに加え、アヘン戦争以後の対イギリスをはじめとする対外危機感の高揚のためである。その傾向はペリー来航以後さらに拍車がかかる。19世紀の該当点数は176点に上り、全体の67.2%に当たる。 3)特に19世紀後半は、明治維新まで17年間であったにもかかわらず92点と、半世紀ごとの集計では断然他を凌駕している。いま少し仔細に分析すると、嘉永年間の22点に対し、同じ6年間の安政年間は45点と倍増している。幕末の政治・対外状況と密接に関連していることを如実に示している。弘化・嘉永年間から、蘭書に基づく西洋砲術書の刊行が始まり、点数は決して多くないが、25点中12点と約半分が安政年間に出版されており、上の一般的傾向と符号している。 4)このように砲術書の執筆・出版は、蘭学系砲術書も含め、当時の政治状況・対外関係と密接な関係をもっていることが判明した。幕末洋学は、従来の医学中心から軍事科学中心へと転換したと一般に言われてきているが、このことは19世紀における砲術書の増加ということからも裏付けられる。また緊迫した政治状況の展開が、西洋砲術・一般砲術書の新たな読者・需要者層を喚起したことを示してもいる。
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Research Products
(4 results)