2004 Fiscal Year Annual Research Report
中央アジア古文献における写本の発達と印刷本導入にかんする研究
Project/Area Number |
13021224
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
庄垣内 正弘 京都大学, 文学研究科, 教授 (60025088)
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Keywords | ロシア所蔵文献 / ウイグル語文献 / ウイグル漢字音 / ウイグル文字音写漢文 / 観世音陀羅尼経 / 統命経 / 縁起聖道経 / 阿含経 |
Research Abstract |
1908年フランスのP.ペリオ探検隊が敦煌莫高窟第181窟から968本のウイグル木活字を将来した。それらはパリのギメ博物館に所蔵されている。また近年は中国敦煌研究院が48本の活字を発見している。それら活字の本格的な研究はやっと最近になって中国の雅森氏の手で行われた。彼の研究成果は中国国内だけでなく国際的にも知られるようになった。雅森氏の研究をふまえながらウイグル木活字について詳しく考察してみた。その結果この活字と称するものが実は実用に適さないことが判明した。この活字は単音、結合音、動詞語幹、語、接辞、辺欄線、句読点の7種からできており、一見してウイグル語構造を巧く利用した機能的な活字に見える。しかし具に観察してみれば以下の重要な欠陥が判明する:1)結合音から構成される活字は、とりわけウイグル語に頻出する音結合のものではなく、借用語にしか現れないものも含まれる。2)動詞語幹には接辞の一部を含む不完全なものや、借用語の一部を切断して動詞に見せかけたものもある。3)辺欄線が文字表記活字と同じ横幅をもち、本来の辺欄線の役割を果たしていない。4)活字印刷されたと推定できるウイグル語テキストが1片も遺されていない。181窟は元朝時代に掘られた窟で、ウイグル木活字もその頃作られたと推定できる。ウイグル木活字は、当時盛んに行われていた漢語や西夏語の活字印刷を真似て、使い古しのウイグル語版木を裁断して何とか活字に仕立てようと考えたウイグル人の努力の跡といえる。
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Research Products
(8 results)