2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13021227
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古勝 隆一 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (40303903)
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Keywords | 石経 / 『尚書』 / 『文選』 / 開成石経 |
Research Abstract |
書物の内容は、書物の形式に規定されるものである。書物の内容のもっとも顕著な変化は、写本から版本への移行期に生じたと考えられる。これにつき、古典中の古典というべき『尚書』を例として検討した。 先行研究において、『尚書』を含む経書の本文の成立は、次のように説明されてきた。経書はながらく写本として伝承されたが、その本文がやや流動的であったため、後漢の熹平石経・魏の正始石経などの石経が国家事業として刻まれ、本文形成の上に大きな影響を与えた。のち、唐代には『五経正義』が編纂され、五經の本文もほぼ固まった。唐末の開成年間、いわゆる「開成石経」が建てられ、これが経書の本文の確定の上に、決定的な影響を与えた。さらに五代・北宋になると、木版印刷の技術が飛躍的に向上し、経書も開成石経の本文を襲うかたちで開版され、これで経書の本文が確定され、今日に伝わる本文も、北宋のそれを基本としたものである、と。 この通説は、本文の形成の上で、開成石経が木版印刷に与えた影響を強調するものであるが、今回の研究を通じ、通説が成立しがたいことが判明した。すなわち、現在伝わる開成石経の拓本は、唐代の石経の姿を伝えるものでなく、宋版の成立以後、補修により内容が書き換えられたものに拠っていることが分かった。開成石経の補修については、すでに錢大〓『唐石経考異』がその可能性を指摘しており、今回、北京の国家図書館に赴き、同書の写本を調査することができた。 さらに、北宋における経書の本文の確定が、他の書物に影響を与えた可能性についても見通しをもつことができた。『文選』李善注、『史記』集解などの木版本の内容は、宋版の経書の強い規定を受けていることが、写本と版本の比較を通じて想定された。
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Research Products
(1 results)