2001 Fiscal Year Annual Research Report
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13021246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
横田 冬彦 京都橘女子大学, 文学部, 教授 (70166883)
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Keywords | 村落社会 / 書物史 / 身分制 / 蔵書 / 在村医 / 農書 / 医書 |
Research Abstract |
(1)日本近世社会における出版文化については、私自身これまでいくつかの個別研究を発表してきたが、今年度はその総括的な見通しをあきらかにし、またそれを、『日本の歴史16天下泰平』(講談社、2002年3月刊、400頁、単著)としてまとめた。これは17世紀全体を扱った通史的叙述であるが、第4章「村落社会と知」、第7章「開けゆく書物の世界」のほか、全章にわたって、近世社会における<知>の広がりと出版文化を叙述の中心的柱の一つとして据えて叙述した。(1)近世村落社会・都市社会における民衆の読み書きレベル、村役人層の行政帳簿レベルの知の形成のあり方、(2)書物の出版とその都市-農村間、中央-地方間における普及・流通の具体的あり方の解明、(3)書物を受容する社会・書物の知の普及が持つ意味について、農書・医書などについて具体的に叙述した。東アジア世界における相互比較にまでは至っていないが、従来の近世社会像に対する問題提起にはなったと考える。 (2)また部落問題研究所のシンポジウム「近世の身分的周縁」において報告し、日本近世社会がなぜ村落社会や都市社会の中に知識人や芸能民を抱え、豊かな芸能・文化を醸成したのかについて、従来の身分制観を見直すことを提起した。 (3)今年度計画の中での調査・作業の中心であった、摂津国の在村医師笹山家の蔵書調査は、全体の仮目録作成を行い、ほぼ入力を終え、調整作業に入っている。特に医学書については、多くの版本の外に写本の存在が明らかとなり、また18世紀初期には後世派の中国医学書導入中心であったものが、その後古医方への転換、蘭学の摂取へと変化していく状況などが具体的に明らかになっている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 横田冬彦: "兵農分離社会の種姓的構造"部落問題研究. 159. 59-67 (2002)
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[Publications] 横田冬彦: "豊臣政権と首都"豊臣秀吉と京都 (文理閣). 18-42 (2001)
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[Publications] 横田冬彦: "近世武家政権と首都"年報・都市史研究. 9. 22-30 (2001)
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[Publications] 横田冬彦: "日本の歴史16 天下泰平"講談社. 400 (2002)