2004 Fiscal Year Annual Research Report
中国近世の知識人社会と出版文化 とくに科挙関係資料と類書を中心に
Project/Area Number |
13021251
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Research Institution | NARA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森田 憲司 奈良大学, 文学部, 教授 (20131609)
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Keywords | 元朝 / 類書 / 文公家禮 / 科挙 / 一枚刷 / 元典章 |
Research Abstract |
本年度は、元朝時代の社会と出版のかかわりの研究を柱の1つとし、研究論文「元代類書における『文公家禮』の引用」においては、『元典章』礼部所収の至元8年の婚姻礼制に引かれている、『文公家禮』を取りあげて、同種の文献である『通制條格』、『翰墨全書』、さらに現行本の『文公家禮』との字句の校訂をおこない、その間にかなりの差異が存在することを指摘し、その背景として、『元典章』と『翰墨全書』の先後関係について、『元典章』を『翰墨全書』が利用した可能性があることを論じた。また、『事林広記』に所載の『文公家禮』についても、現行本との字句の差異を検討し、他の諸文献とは異なる傾向があり、『居家必要事類』や『翰墨全書』での引用とも比較し、この範囲では、これらの類書相互の引用関係は想定しにくいことを指摘し、類書における先行書の利用という通説がかならずしも当てはまらないことを論じた。さらに、これらの書物や法令での引用という問題は、東アジアの近世社会に大きな影響を与えた『文公家禮』の享受を考える上で、これまで取りあげられてこなかった問題である。また、昨年度からの調査課題である「一枚刷り」についても調査を進行させ、本特定研究の機関紙『ナオ・デラ・チーナ』に、その文献史料としての利用価値を論じ、従来の出版文化史研究において、こうしたものを対象とする視点が欠落していることを指摘するとともに、この種の資料を取り巻く環境の変化として、中国における古物市場の発展があることについて紹介する一文を発表した。なお、後者については、一般読者向けの雑誌においても、科挙資料などを例に挙げて、その資料としての魅力を紹介した。
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Research Products
(4 results)