2002 Fiscal Year Annual Research Report
代謝・運動リズムのシンクロナイゼーションに基づくアメーバ様細胞の情報システム設計
Project/Area Number |
13022202
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上田 哲男 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (20113524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中垣 俊之 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (70300887)
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Keywords | 粘菌 / 細胞計算 / 迷路 / 自己組織化 / アメーバ細胞 / 細胞行動 / 生物リズム |
Research Abstract |
原始的な巨大アメーバ細胞である粘菌変形体は、外部環境に応じて形状変化を伴う多言種多様な行動をとる。細胞インテリジェンスの創発の観点から、粘菌変形体におけるリズムの階層性ならびに管形状の合理性を実験的に見出し、シミュレーションによりリズム素子のシンクロナイゼーション機構を解明した。 粘菌リズムの階層性と規則性:粘菌の変形に伴う7つの多重リズムを見出し、その周期は、次のように2重の等比数列をなす。T_<i+1>/T_i=7.5、T_<i+2>/T_i=2.8 ここにi=1,2,3である。このように粘菌の多重リズムは階層的時間秩序を示す。 粘菌の輸送ネットワークの最適性:寒天ゲル上に複数の餌を与えると、粘菌は全ての餌場所をたかだか二三本の管で結ぶような管ネットワークを形成した。このネットワークの幾何学的形を統計的に解析し、機能的なネットワークが持つべき複数の基準:全長の最短性、餌場所間の密な結合、事故による管の断線に対する連結補償性をすべて満足していることを示した。すなわち粘菌変形体のネットワークはインテリジェントで、最適性を満たしている。 粘菌の動的挙動の数理モデリング:粘菌変形体を、原形質の要素が自励振動し、原形質ゲルが内部のゾルを取り囲みシート状に広がっているものとみなし、時間空間的に相互作用しながら発展する粘菌の数理モデルを構築した。硬さパラメータの位置依存性により、同心円状に広がる粘菌でみられる同調した振動や、フェニルアラニン存在下あるいは高温下における粘菌でみられる全体としては協調しない振動を再現できた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Yamada, H., Nakagaki, I.: "Oscillation patterns in cytoplasmic networks of the Physarum plasmodium"Proceeding of Traffic and Granular Flow 2001. 92. 47-52 (2002)
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[Publications] 中垣俊之: "粘菌の流路ネットワーク形成と細胞リズム"第17回生体・生理工学シンポジウム論文集. 373-376 (2002)
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[Publications] 中垣俊之: "生物専攻課程に数理生物学を"数学のたのしみ. 30. 43-48 (2002)
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[Publications] 中垣俊之: "To be stationary or oscillatory, that is a question?"日本時間生物学会会誌. 8. 32-37 (2002)
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[Publications] 中垣俊之: "真正粘菌変形体の運動とゾルゲル流路ネットワークの生理"京都大学数理解析研究所講究録. 1305. 1-7 (2003)
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[Publications] 中垣俊之: "真正粘菌変形体の運動と形態形成に関する数理モデル"京都大学数理解析研究所講究録. 1305. 8-14 (2003)