2002 Fiscal Year Annual Research Report
古細菌細胞膜脂質における特異な炭素-炭素結合の生成機構の解明
Project/Area Number |
13024230
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
江口 正 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60201365)
|
Keywords | 古細菌 / 大環状膜脂 / 生合成 / メタン菌 |
Research Abstract |
生物にとって外界と自己を仕切る膜脂質は非常に重要な役割を果たしている。真正細菌、真核生物とは異なる第三の生物群として分類される古細菌は、海底火山や塩田などの高温・高圧・高塩濃度・酸性などの環境に生息しており、このような環境で生息していくにはその膜脂質の重要性はなおさらのことである。古細菌の膜脂質は他の生物群とは異なり、イソプレノイド鎖がグリセロールとエーテル結合した特異な構造をしている。更に一部の古細菌には36員環、72員環の大環状脂質も存在する。これらの化合物はイソプレンユニットの"Head-to-Head"結合で分子内あるいは分子間で結合しており、生合成的観点からも非常に興味深い。 本研究ではゲラニルゲラニル鎖14位の二重結合に注目し、古細菌の環状脂質のみに見られるhead-to-head型の反応について知見を得るべく、重水素化ジゲラニルゲラニル-sn-グリセロールリン酸ジメチルエステルおよびそのゲラニルゲラニル鎖の14,15位飽和型基質および14位二重結合を15位に異性化したΔ^<15>型基質を合成し、72員環脂質および非環状ジエーテル型脂質を有する好熱性メタン菌Methanothermobacter thermautotrophicusを用いて、投与実験を行った。その結果、72員環脂質にはジゲラニルゲラニル型基質のみ取り込まれ、非環状脂質にはジゲラニルゲラニル型基質と14,15飽和型基質が取り込まれた。また、Δ^<15>型基質に関してはどちらの脂質にも取り込みが見られなかった。これより72員環脂質生成にはイソプレノイド末端の二重結合が不可欠であり、その二重結合はイソプレノイド鎖の14,15位の炭素間になければならないことが明らかとなった。環化の反応機構について考察すると、16位炭素上のC-H結合はすべて保存されていることから、16位炭素が直接活性化され反応が進むと考えられ、14位二重結合の重要性から16位炭素上に安定なアリルラジカルが生成し、このラジカル同士が反応することで環化すると示唆された。
|
Research Products
(1 results)